「入学準備にランドセル購入が当然であるような空気を感じます。京都市立小学校の場合、ランドセルでの通学が義務なのでしょうか」。来春、長女(6)が小学校に入学するという京都市内の男性(48)から京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に、このようなメールが送られてきた。確かに小学生の通学かばんというとランドセルというイメージが強いが、果たして決まりがあるのだろうか。京都市教育委員会などに尋ねた。
男性は西京区の会社員。長女が来春、自身の母校に入学する予定であることから、通学かばんを準備するため、近隣住民や職場の同僚らに話を聞いて情報収集してきた。通学かばんは自身が小学生だったころはランドセルとリュックサックを掛け合わせた「ランリック」が主流だったが、話を聞く中、今の在校生の多くはランドセルで通学しているらしいと耳にした。
男性は「子どもが貧富の差を見せつけられたり、いじめられたりするのではないかと思うと、いい物を用意してあげたい気持ちになるが、ランドセルは高価で誰もが買えるとは限らない。持ち物で差が出てしまうのはどうなのか」と疑問を投げ掛ける。
市教育委員会によると「通学かばんを市教委や学校が指定していることはない」という。御所南小(中京区)のように、入学前の学用品購入の際にランドセル以外の通学かばんを買える学校もあるが「あくまで推奨の範囲。最終的に保護者の判断にゆだねている」と説明する。
京都府や滋賀県に浸透しているランリックは、向日市の学生用衣料品販売会社「マルヤス」が発祥だ。「高価なランドセルを買えない家庭があり、いじめが起きている」という小学校長の相談を受け、初代社長の鈴木正造さん(故人)が開発した。ランドセルを解体して通学かばんの仕組みを学んだり、生地や金具を探し歩いたりして1年がかりで完成させた。
1968年の発売後も利用者の声に応えて改良を重ねてきたが「安全で軽量、高性能な通学かばんを低価格で提供する」という原点は変わらない。全国各地に根強いファンがおり、きょうだいや親子で使う人も多いという。
また、今年は新型コロナウイルス禍で小学校の始業が遅れたため、通学しやすい春にランドセルに慣れることができなかった1年生たちが、「ランドセルは重くて暑いから」とランリックを買い足すケースも増えているという。
開発者の長男で現社長の鈴木大三さん(65)は「子どもの数が減っているが、原点を守りながらも時代に合わせて形を変えていきたい。より丈夫にしようとすると重くなったり、なかなか思うようにいかないが、最高の機能のものをできるだけ値段を抑えて提供したい」と心意気を語った。
西京区の男性の長女は結局、母方の両親からランドセルをプレゼントしてもらった。長女は年上のいとこのランドセル姿に憧れていたという。男性自身は「ランリック派」としつつ「子どもが6年間、楽しく通学してくれたらいい」と願っている。
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