梅雨を迎え、周辺住民の不安な状態が続いています‐。特命取材班にこんな声が寄せられた。記者が筑紫野市阿志岐の現地に足を運ぶと、目の前に広がるのは削り取られ、地肌がむき出しの斜面だった。すぐ向こうには民家が並んでいる。どうしてこんなことになったのだろうか。
奥の民家は朝香団地と呼ばれる住宅団地の一角。住民の話を総合すると、斜面の部分はかつては住宅よりも高かった山で、樹木が生い茂っていた。
2012年に不動産会社が樹木の伐採について、14年には伐採後の斜面を切った土砂の搬出について住民らに通知。現在のような形状になって、もう数年がたつという。
斜面の高さはざっと10メートル以上。豪雨で土が流され、住宅の基礎部分に影響していないか。斜面の下には県道が走り、土砂が流れて交通に影響しないか…。住民はずっとこんな不安を抱えてきた。
「伐採で木の葉が飛び散らなくなり、最初は喜んだが、むき出しのままは困る」と男性(83)は語る。別の男性(75)は「自分の土地まで削られてしまった。元に戻してほしい」と憤りを隠さない。
不安を抱く住民側は市や県に何度も相談した。だが行政としての対応は困難という。市危機管理課は取材に対し「いろいろ検討はしたが、民間同士の話であること、開発規模からみて、法に基づく行政指導などはできない。安全管理をお願いするしかない」と苦しい表情を浮かべた。
不動産会社を取材した。住民が抱く不安について訪ねると、社長は「元々は山だったところで、簡単には崩れない」と主張。削り過ぎの事実は認めて「重機オペレーターが誤った。時期は未定だが対応する」とし、「何かあれば100%責任を持つ」と強調した。
住民側は弁護士の助言を得て、被害届の提出も検討している。弁護士によるとこのケースでは「不動産侵奪罪」が適用される可能性があるという。
(西日本新聞「あなたの特命取材班」から)
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