9月中旬、兵庫県播磨地域の女性(48)の元に、娘が通う大学から後期の学費納付書が届いた。だが、新型コロナウイルスの感染拡大で、前期はオンライン授業が大半。後期は対面授業が増えたが、大学で勉強する時間は通常より少ない。「なぜ学費は減額されないのか」と女性。確かに、授業料はともかく、「施設利用料」も例年通りというのはどういうことか。大学側の事情を取材した。(上杉順子)
神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」に声を寄せた女性の娘が通うのは、甲南女子大学(神戸市東灘区)。納付書には「(学費は)対面授業や施設使用の有無だけではなく、教育活動の充実にかかる総合的な経費」との説明があった。
女性は「大学の言い分もよく分かる。でも、保護者も学生も収入が減ってしんどい思いをしている。施設使用料を減らすなど、少しだけでも痛みを共有してもらえたらと思うのは甘えでしょうか」と話す。
同大学に取材した。広報担当者は「人件費や施設の維持管理費が例年通りであることに加え、コロナ対応で例年にない経費が発生している」と説明する。
「例年にない経費」とは、オンライン授業の通信設備などを整える支援金として全学生約4千人に5万円を一律支給▽同じ理由でネットワークを増強▽大学前バス停への大型空調機器設置など感染防止対策費用-などを指す。
同大学は一律5万円支給以外にも、例年10人程度の「特別奨学金」枠を200人に拡充するなど経済支援策を打ち出している。「学びと学生の命を守るため、ご理解をいただきたい」としている。
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学費への不満は、コロナ禍で大学キャンパスへの立ち入りが制限された4月以降、くすぶり続けている。
関西学院大(西宮市)の冨田宏治副学長は12日の会見で「学費返還を求める声があることは承知している」と認めた上で「本当に困っている学生をとことん支援した」と、学費による奨学金充実を強調した。