近くの空き家の植木が伸び放題で道路にせり出し、見た目にも気味が悪いが、何とかならないか-。神戸市須磨区の男性(39)から神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」にこんな依頼が寄せられた。現地に行くと、植栽が森のように茂り、隣家や電線に接している。危険な空き家の撤去や植栽の伐採は、行政が行えると定める法律や条例があったはず。だが、取材を進めると、空き家対策の「壁」が立ちはだかっていた。(森本尚樹)
その空き家は同区妙法寺の住宅地の一角にあった。木造2階建ての建物自体は老朽化しているものの、倒壊などの恐れはない。ただ、生け垣のカイヅカイブキ数本が建物以上の高さに成長していた。「車の通行の妨げになっている上、害虫の発生や放火なども心配」と男性。木の上部は電線に接し、火災の懸念もある。
男性によると、住んでいた老夫婦はいずれも亡くなり、10年ほど前から誰も住んでいないという。登記簿には1976年の売買以降、記載がない。共有者に親族とみられる男性の名があるが、その住所地は区画整理で様変わりし、所在をたどることはできなかった。
この近所の男性は市建設事務所にも相談したが、結果は知らされず、対策もされないままだ。
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神戸市は2016年度に、空家空地対策推進条例を制定した。これにより、市長は適切に管理されていない「特定空家」の所有者に除却、修繕、伐採などの措置を勧告し、従わない場合は市が自らできる(行政代執行)ようになった。
ではこの空き家の植栽も、手続きをすれば市に伐採してもらえるのだろうか。市安全対策課の担当者は「その程度の状況では無理かもしれません」と話す。
対策にはまず、所有者を特定する必要がある。共有者の男性が亡くなっている場合、市が戸籍をたどって全相続人を探し、相続の意思を確認する。