「昨年50万円あったボーナスが今年はカット」。ある大学病院の看護師さんがテレビのインタビューでこう答えていました。新型コロナウイルス感染第2波の襲来が懸念される中、残念ながら疲弊して看護師さんが辞めた、来院患者が減って歯科衛生士さんが解雇された、といった話も耳にします。
今年5月に全日本病院会などが行った緊急調査で、今年4月に赤字だった医療機関の割合が、昨年同月の45・4%から66・7%と大幅に増えていることがわかりました。また兵庫県保険医協会が5月末に行った調査では、歯科診療所の93.8%で昨年4月と比べて今年4月の患者数が減少していました。受診を控えた人が多かったのが主な理由とされ、他業界同様医療業界も厳しい状況になっています。医療従事者の新規採用減を決めた医療機関もあり、人材の確保も危惧されるところです。
現在、本学医療保健学部の4年生が医療機関や企業などへの就職活動を行っています。「治療装置の製作を通じ、患者さんに生きる喜びを感じていただけるような仕事がしたい」、「口腔ケアは患者さんの命をも守る仕事だと思う」と話す学生の眼は、3年生までとは完全に異なるものになりました。臨床実習などを経て、患者さんの存在や将来就こうとしている仕事の重要性について理解が進んだ表れではないかと感じています。
医療系大学の一教員の狭い視野で申し上げると、このような学生の思いが通じる医療現場や職場が少なくなってはいけないと考えています。全国には多くの医療系養成機関がありますが、本学の学生同様真摯な気持ちを抱く学生が将来第一線で活躍できるよう、医療現場を絶対守らないといけないと思います。今ここでこれからの人材が育っていかないと、近い将来、良質の医療が提供されない事態に陥る可能性も否定できないからです。
今「安全に、安心して」医療サービスを受けたいと考えている方が大勢いらっしゃるでしょう。同時に医療従事者の多くも「安全に、安心して、精一杯」現場で患者さんに向き合いたいと考えていらっしゃると思います。補助金や給付金制度ももちろんありますが、人材育成の観点からも、思い切った方策のもと将来にわたり引き続き良質の医療の提供が叶うよう切に願うところです。