帰省の相談をすると「絶対に帰るな」…岩手に住む父親が語る理由に広がる共感「怖いのはコロナよりも人」

川上 隆宏 川上 隆宏

「そろそろ帰っていいかな」…岩手に住む父親に軽く帰省の相談をしてみたところ「絶対に帰るな」との返事が。理由を聞くと、大変重みのある言葉が戻ってきた…。そんなTwitterの投稿が話題を集めています。新型コロナウイルスの感染者を中傷する風潮が一部にありますが、人口が少なく人々の関わりあいが濃密な地方では、都市部とは違ったストレスがあるようで、やり取りの内容に多くの地方出身者から共感する声が寄せられています。

投稿したのは東京都在住の会社員「けいし*」(@pandafun20)さんです。「岩手に住む父に『そろそろ帰っていいかな』」と軽く言ってみたところ…」とのコメントとともに、父親と交わしたLINEメッセージのやり取りを画像で6月24日に紹介したところ、26日夕刻までに15万件の「いいね」がつくなど、反響を呼んでいます。父親からの返事は、下記のようなものでした。

   ◇   ◇

「絶対に帰るな。」
「岩手1号はニュースだけではすまない。」

   ◇   ◇

岩手県は6月26日現在、新型コロナの感染者が全国で唯一確認されていない都道府県です。もし投稿者の「けいし*」さんが、ウイルスに感染していた場合、岩手県に戻ってくれば、感染者の「第1号」になってしまう可能性があります。もしそうなったら、どんなことが起きてしまうか…。

投稿を見た人たちからは、地方で初のコロナ感染者となった人たちが、嫌がらせを受けたという噂を聞いたことがあるとの報告が続々と。「都会だと人混みに紛れて感染経路不明、追跡不可能になるけど、田舎だとすぐにどこそこの誰ってわかってしまう」といい、「怖いのはコロナじゃなくて人間ってことか」との意見もありました。

また、「私も親に岩手に帰ってくるなと言われました」という声のほか、父親の言葉に「子を思うがための説得力を感じる」「おとんも本当は会いたいんやで」と、愛情を感じたという人もいました。

   ◇   ◇

投稿した「けいし*」さんにお話を聞きました。

―ご実家が岩手県でいらっしゃるのですね。

「市街地から少し離れた住宅地に実家はあります。父親とは普段からLINEでやり取りをしていて、このやり取りは6月24日に行いました」

―「そろそろ帰っていいかな」とのことですが、岩手にはいつから帰っていませんか。

「大学進学にともない、上京しました。上京してからは毎年春または夏に帰省していますが、去年の5月以降は帰っていません」

―「岩手1号はニュースだけではすまない」との、お父様からの返信を見られて、どのような気分でしたか。

「上京してしばらく経ち、田舎独自の感覚を忘れておりました。田舎独自のルールは大変だなと思いました。ツイートのリプ欄を見ていても大変な人がたくさんいるのだと知りました」

―「けいし*」さんはこのあとどのような返事を返されましたか。

「父親には『わかった、帰らない』と言いました。子供の行動を制限することの少ない父のため、何かをするな、と言われたのはいつ以来か思い出せないくらいです」

―今回のメッセージのやり取りをTwitterで紹介された理由を教えてください。

「地元に帰れないという嘆きを共有したく、つぶやきました。といっても、普段から何気無いことをつぶやいているので、大きな意図はございません」

―このような「帰ってこないほうがいい」「岩手で初の感染者となったら大変だ」というようなやり取りは、これまでもお父様や岩手のご家族とされていましたか。

「はい。春先ごろに父と話した時は、ダメだよね―という雰囲気で話をしていました。今回はそろそろいいかな…と確認してみたら、ダメだと言われた次第です。ほかに、愛媛に住む祖母にも電話をした時も「帰ってくるなと」言われました。今回の父とのやり取りは、その祖母との電話を共有した際に生まれたものです」

―岩手県は新型コロナの感染者がまだ発生していませんが、そのことについてどのようにお感じですか。

「家族のいる地域で感染者が出ていないのは安心ですし、各県民も気を張っているのは大切なことだと思います。一方で、感染者が出ていないからこそのストレスもあると思うので、そのストレスはうまく緩和されると良いなと思います」

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