手話で会話していたグループに店員が差し出したのは…居酒屋の「紙対応」に感動した本当の理由を聞いた

広畑 千春 広畑 千春

ちなみに、この数日前には、電車の車内アナウンスが聞こえないため、人身事故で電車が止まっていることが分からずオロオロしていたところ、近くにいた人がスマホでアナウンスの内容を書いて教えてくれたこともあったそうです。

  ねこさん自身は、母親が妊娠中に感染した風疹の影響か、生まれつき耳が聞こえません。手話を使い、補聴器を付けて過ごしてきましたが、ある日補聴器を外すことを決めたそうです。

  「小さい頃から周囲に『聞こえる人のようになれ』と言われて育った」といい「聞こえない自分を認めてもらえず、『わたし』は常に空っぽだった」というねこさん。物心ついたときには、聞こえる人たちが聞こえない人たちに対し「この中で誰がより発音ができて、より良く聞こえるのか」を判断して態度を変えていることを感じ取り「聞こえないのに、聞こえるように装うようになった」といいます。

  「でも、それは聞こえや発音の優劣から自分の価値を判断して、同じ聞こえない人に対して、聞こえるフリをして優越感を感じていただけだった」とねこさん。以来、「神さまが耳を忘れてしまった」のではなく「自分から耳を置いてきたのだ」と表現するようになったといいます。 

  現在は小休止中ながら、聞こえる人と聞こえない人をつなぐ活動に取り組み、一緒にファッションショーを企画したことも。ねこさんは言います。

  「日本のこの偏見は、『聞こえない人のことをよく知らないから』起こるのだと思っています。だったらまず知って貰えばいい。そのためには、私たち聞こえない人ももっと前に出る必要があると思うのです」

  「そして、聞こえる人たちも待っているだけでなく、自分から聞こえない人や障害者のことを知ろうとしてほしいと思っています」

  そうそう、ツイートにあった「おしゃべり」ならぬ「手話べり」という言葉にも「かわいい♪」「楽しそう」というリプライが相次いで寄せられました。「手話でワイワイ話すのって楽しそうだな、と感じてもらえたら」とねこさん。こんな一言も「見えない壁」を崩していく穴になるかもしれません。

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