「何で私ばかり…親が恨めしかった」育児と介護の『ダブルケア』に仕事…ある女性が暗闇から救われた理由

広畑 千春 広畑 千春

 今、子育てと親の介護の両方、いわゆるダブルケアを担う女性が増えています。仕事と育児、仕事と介護の両立すら難しいのに、ダブルケアとなれば、仕事をあきらめる人も少なくありません。何があれば、またどうすれば働き続けられるのか…。働きながら義両親の介護と育児を続けてきた女性にお話を聞きました。

介護は「ある日突然に」

 ユメコム常務取締役で産業カウンセラーの橋本珠美さん(50)は7年前、突然義父(当時76歳)が関節リューマチで動けなくなり、義母(同74歳)と共に介護を担うことになりました。子どもは中学生の息子と3歳の娘。特に娘はまだまだ手がかかる年頃で「目の前が真っ暗になった」と振り返ります。

 予兆はありました。義父は近くに引っ越してきていましたが、1年ほど前から足が痛いと訴えるように。それでも息子である夫は症状を詳しく聞くわけでもなかったといいます。

 「子どもって、いくつになっても親に甘えてしまう。それが自分の子ならもっと心配して病院にも連れて行くのに、どこかで『親は大丈夫だろう』と思ってしまっていた」。義父は退院後、段差が上れないほど体力も衰えてしまいました。

 気付けなかった負い目もあり、多忙の夫に代わって橋本さんが義母のサポートをするように。午前5時に起きて子どものお弁当を作り、義父の家へ行きトイレの介助。7時40分に娘を保育園に連れて行き、9時に出社、17時に退社。1時間かけて帰宅し、娘のお迎えと義両親の買い物をし、午後7時半に帰宅。食事を作り、息子の勉強を見て娘をお風呂に入れ、午後9時に子どもを寝かしつけ、午後10時以降は夫の夕食作り。就寝前のトイレ介助は夫が担当しましたが、就寝後も夜中の3時ごろに電話が鳴る―という日々。義父が深夜に体調を崩したとき娘を起こして病院に連れていくか、娘が熱を出していても深夜に義父から「トイレに行きたい」と電話が入る…。仕事中も頻繁に呼び出され、予定変更の影響は数日間引っ張ってしまいます。

「何を優先」突きつけられる毎日…鍵は「本人の話」にあった

 「気持ちとしては子どもを優先したい。でも親は命に関わる恐れもある。大泣きする娘を置いて、義父の元に走ったことも1度や2度じゃない。仕事も思うようにできず『何で私ばっかり』…と介護が、親が恨めしかった。振り回されてフラフラしている自分も嫌で、自分の人生って何なんだろう…と自分を苛むことが何度もあった」

 「出口が見えない暗闇に入ったよう」だった毎日のある夜、いつものように呼ばれて行くと、義父は失禁して布団を濡らしてしまっていました。「何でもっと早く言わへんの」と怒る義母。それに義父は激怒し「おむつもポータブルトイレも嫌」と譲りません。疲れ果て「何でトイレに行かれへんの?」と義父に尋ねたところ「ベッドから起き上がられへんねん」と返事が。それならとベッドを可動式にし、何度も起き上がる練習をしたところ、自分で起きられることが分かったのか、夜の呼び出しはガクンと減ったそうです。

 「本人が怒ってしまうのは、それだけ自分のそんな姿を人に見られるのが情けなく、悲しいから。親は子どものために頑張れても、子どもに迷惑は掛けたくないと思ってしまいがち。本人が前向きになれる方法や情報をどう見つけられるかが、コツなのかも」と橋本さん。それに気付いてからは、義両親の「バイオリズム」を把握するのに務めたといいます。

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