「人工物に囲まれた生活ではなく…」精神科医の気持ちを潤すのは? きっかけは、ストレス解消のための昼休み散歩

山陽新聞社 山陽新聞社

 元岡山県職員で精神科医の高木寛治さん(81)=岡山県総社市=が、自選エッセー集「石に救われる」(吉備人出版)を出版した。タイトル通り、石のおかげで豊かな人生を送っているという。実生活も「岩石に囲まれている」と聞き、自宅を訪ねて魅力を聞いた。

 家に着くと、門の脇で寄り添う二つの縦に長い巨岩が目に飛び込んできた。亡き妻と自分の姿を重ねた夫婦(めおと)岩。退職記念で15年ほど前に立てたという。

 約25年前に整備した枯れ山水風の庭にも大物がごろごろ。中でも一番奥の高さ2メートルを優に超す岩は「(神が宿るとされる)磐座(いわくら)をイメージした」と言い、しめ縄も巻かれていた。

 玄関先も石だらけ。古道具店で買った鑑賞用の「水石」、高梁川の河原で拾った丸石…。室内も石や関連本でいっぱいとのこと。

 石に魅入られたのは40歳前後。職場のストレス解消のため昼休みに後楽園を訪れた時、水石展の作品に目が留まり、河原石とともに集めるようになった。「今の形状になるまでの膨大な年月に思いをはせていると、心が落ち着いてくる。風雪にじっと耐える姿から生き方を学ぶことも多い」と楽しげに語る。

 石をもっと知ろうと地質学の専門書から絵本までさまざまなジャンルの本を買い求め、なじみの古書店主の勧めで50代前半から雑誌投稿も始めた。60歳ごろ磐座のアマチュア研究者団体に入り、岡山県内外を訪れている。

 今回の自選集は過去20年に自費出版した石に関する随筆集5冊のうち、主に第1、2集から計11編を収録。「自分の石」や「河原」といったテーマで幼少期の思い出や石との出合い、好きな詩などについてつづっている。

 取材の終わりに「小さな石ころでいいので手元に置くことをお勧めしたい」と話し、こう続けた。「人工物に囲まれた生活に自然物が一つ加わるだけで気持ちに潤いが生まれる。地球環境を考えることにもつながっていくと思うんです」

 「石に救われる」はA5判276ページ。1冊1980円。岡山県内の主な書店や通信販売で購入できる。

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