SNSで話題の「我が子からTwitterを取り上げる母の像」に込められた願いとは…品川区に聞いた 

北村 泰介 北村 泰介

 東京都品川区のJR大井町駅西口前の広場に「大井町名物 我が子からTwitterを取り上げる母の像」としてSNSで話題になっているブロンズ像がある。女性が右手で高く掲げている鳥がツイッターのロゴマークに似ており、その鳥を子どもが物欲しそうに(?)見上げている構図から、そんな発想が生まれたようだ。だが、ツイッターが生まれるより遥か前の1980年代から駅前で見かける像である。この機会に像に込められた思いを探った。

 「笑ったwww」「こどもにスマホで遊ばしてたけど見られては困るツイートが見つかり慌てて取り上げてる像だと思ってた」…。そんなコメントがぶら下がっている。ツイッターに限らず、ゲーム等に夢中になる子供から母親がスマホを取り上げるさまは今の世相の〝あるある〟だ。その前提で、ロゴマークと像の鳥を重ねた人たちの共通認識の中で盛り上がったネタなのだろう。それにしても実際のところ、この像は何か。品川区のホームページを閲覧すると、詳しく記載されていた。

 品川区は、核兵器の廃絶と恒久平和の確立を願い、1985年3月26日に「非核平和都市品川宣言」を表明。翌年、大井町駅前に建立されたのが「平和の誓い」像だった。同区の担当者は当サイトの取材に対し、「非核平和都市品川宣言1周年を記念して制作し、1986年3月に設置されました」と説明した。

 像のそばには広島平和記念公園の「平和の灯」と長崎爆心地公園の「誓いの火」を合火した「誓いの火」が90年8月に設置。2015年5月には、広島への原爆投下から1カ月後の焦土に咲いた「カンナ」の花70株を植樹した「しながわ平和の花壇」が像の周囲にできた。現場に足を運ぶと、被爆地の思いがひしひしと伝わり、「Twitter~」云々と形容すること自体が申し訳なくなる。〝野暮天〟であることは百も承知で、そう感じた。

 改めて像を見上げ、「Twitterのロゴマーク」とみなされた鳥を凝視した。尾の部分には「品川」の文字をアレンジしたデザインが施されている。それにしても、一体、なんの鳥だろう。そして、くちばしに加えているものは…。「ドカベン」の岩鬼がくわえている葉っぱにも見えるのだが、そんなわけはない。品川区総務課の平和担当に問い合わせた。

 担当者は「爆弾です。平和の象徴であるハトが爆弾をくわえて行ってしまうことを表しています」と明かした。そう、ハトだったのだ。そして、葉っぱは爆弾(核兵器の象徴)。ハトがこの世界から核兵器を一掃すべく、それをくわえて空に飛び立つ姿なのだ。

 同時に、記者が気になったのは、行政サイドとして、SNSでのジョーク的な投稿という形で平和の誓い像が注目されたことについて、どう思われているのかということだった。

 見解をうかがった。担当者は「平和の誓い像に込められた想いに誤解がないよう願っています。これを機に、品川区の平和への取り組みについて、多くの方々にご理解いただけると幸いです」。大人の対応の中にも、「誤解がないよう」の部分に強い思いを読み取った。担当者は今後に向けて「非核平和都市品川宣言の趣旨を次世代に語り継いでいくことの大切さをアピールしていきたく存じます」と誓った。

 像の作者は彫刻家の小金丸幾久氏。1915年に長崎県壱岐郡(現在の壱岐市)に生まれ、2003年3月に都内で亡くなった。SNSを通して、その作風に興味を持った人は、故郷の壱岐市にある「彫刻家小金丸幾久記念館」で様々な作品に触れることができる。

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