最後の全日本フィギュアに挑む大学4年生の思い 高橋大輔への声援を自分の力に

藤井 七菜 藤井 七菜
最後の全日本に挑む同志社大学4年生の笹原景一朗
最後の全日本に挑む同志社大学4年生の笹原景一朗

 それほど、笹原にとって全日本は「一番気持ちよく滑れる場所」なのだ。

 「普段の練習はジャンプに集中しがちですが、全日本は自分の世界に入り込んで、映画の主役になった気分で演技できる舞台。それに、何千人もの視線を浴びることってそうないですし、お客さんが温かくて、失敗しても拍手してくださるのも全日本の魅力です」

 必ず全日本の出場権を勝ち取る-と決意して臨んだラストシーズン。笹原は「アレをやっておけば良かった、という後悔だけはしたくない。パッと思いついたらすぐ行動に移すことにしました」。まず、練習拠点を滋賀に替えた。

 笹原は京都出身。3歳からスケートを始め、小学6年生まで京都のリンクで長沢琴枝コーチに師事していたが、リンクが閉鎖することになり同コーチは岡山へ移ってしまった。その後は大阪・守口のリンクで練習していたがそこも閉鎖。練習環境を求めて昨年はアメリカにも渡り、帰国してからは大阪の別のリンクに通っていたが、自宅から遠く練習時間の確保が厳しかった。そんなとき、長沢コーチが滋賀に移ることになり、笹原も思い切って拠点を移した。

 「やっぱり自分のスケートの基礎を作ってもらった先生ですし、一緒に合宿に行ったり家にも泊めてもらったりして、お母さんみたいな存在でした。どこか恋しいと思っていた部分がありました」

 練習環境の次に、スケート靴のブレードを替えた。2011年世界選手権銀メダルの小塚崇彦さんが企画開発し、今年4月に発売された「KOZUKA BLADES(小塚ブレード)」だ。

 それまで使ってきたブレードは軽くてジャンプが跳びやすかった。しかし滑っているときの氷を削る音が大きく、長沢コーチに「せっかく静かな曲を使っているのに台無しになる」と指摘された。

 「同じリンクで練習している本田ルーカス剛史選手が小塚ブレードを使っていて、良いよと。それで、長沢コーチに試してみないかと勧められました」

 引退直前に、これまで使い慣れていた道具から替えることは大きな挑戦だったが、この判断は大正解だった。

 「スケーティングがすごくしやすくなりました。ひと蹴りで滑る距離が今までの2倍くらい伸びます。全然違いました」

 笹原はもともと伸びのある美しいスケーティングが持ち味。それがさらに増す道具に出会えたのだ。

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