「地元に1年中滑れるスケートリンクを復活させたい」と署名活動をしている女性スケーターがいる。兵庫・姫路市在住の三上潮香さん(39)だ。
「私のように趣味で滑っている大人は増えています。通年営業のリンクがないことは、私たちはもちろん、選手を目指す子どもたちにとって本当に深刻な問題なんです」
三上さんは、小学生の頃に3年間フィギュアスケートを習い、4年前に趣味として再開。すでに姫路には冬季のみのリンクしかなく、練習場所や時間にずっと苦心している。
「兵庫西部のスケーターは、4月から11月の約7カ月は(近隣の)岡山や西宮の通年リンクで練習するしかありません。私は休日に車で2時間近くかけて行っています」
特に競技志向の子どもたちには厳しい環境といえる。毎日通える距離に通年リンクがないと、遠方への送り迎えなどで両親の負担が増加。親子で苦労する姿を三上さんはたびたび見てきた。
姫路市のジュニアスケーターにとって、全日本ノービス選手権(13歳以下の日本一を決める大会)への出場は難しくなっている。ノービスを含めた全カテゴリを見ても、同市出身の選手は全日本選手権に10年以上出場できていない。
一方で、兵庫出身の現役フィギュア選手を列挙すると、紀平梨花、坂本花織、三原舞依など世界のトップが揃う。紀平は西宮市、坂本と三原は神戸市出身。西宮市や大阪・高槻市の通年リンクで練習できる環境にある。
かつては羽生結弦も小学生の頃に練習拠点としていた宮城・仙台市の通年リンクが閉鎖し、営業再開するまでの約2年は伸び悩んだ時期でもあった。気軽にレジャーとしてのスケートを楽しむ機会も失われ、才能ある選手の発掘を逃すことにもなってしまう。
かつての姫路市には通年リンク「姫路アリーナ」が存在。高橋大輔を振り付けたことで有名な元アイスダンサー・宮本賢二さんが練習していた。NHK連続テレビ小説「てるてる家族」でスケートを練習するシーンの撮影に使われたのも姫路アリーナだ。しかし、老朽化と経営難から2006年に閉鎖。その後、姫路スケート協会が存続支援を要請する1万人の署名を姫路市に提出するなど、営業再開を働きかけてきたが実現していない。