除夜の鐘といえば大みそかの夜-。こうした固定概念を覆すようだが、京都市左京区岩倉の妙満寺(顕本法華宗総本山)は「除夜の鐘」に代わり、昨年から大みそかの昼に「年送りの鐘」として実施している。その背景には社会的な事情が深く関わっていた。寺に取材した。
妙満寺は能や歌舞伎で知られる「安珍清姫伝説」の道成寺(和歌山県日高川町)にあった鐘を有することで知られる。従来は他の寺と同様に境内南部にある鐘楼で31日夜に「除夜の鐘」を突いていた。
除夜の鐘となると多くの人が集まり、僧侶だけでは人手が足りず、交通整理などを行う人も確保しないといけない。しかし、昨今の人手不足の時代に大みそかの深夜に働く人を集めるのは至難の業だ。加えて以前は多くいた修行僧も、近年は少子化の影響で減少しているという。こうした人手不足や少子化といった社会事情が背景となって妙満寺は昨年から「年送りの鐘」として昼に実施している。
妙満寺は「年送りの鐘は参加人数に制限はない。ぜひ鐘を突いてもらいたい」と参拝を呼びかける。「年送りの鐘」は31日午後3時から5時。当日、任意のお布施を持参した人(先着108人)には「安珍清姫の鐘御守」を授与する。