中国軍、ポーランド国境での演習が示唆する未来 ウクライナ戦争に北方領土…高まる『海外派遣』の現実味

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ロシアによるウクライナ侵攻から間もなく2年半が経つ中、中国軍は7月8日からロシアの友好国であるベラルーシで合同軍事演習を開始した。この演習は7月半ばまで続き、人質救出作戦や実弾射撃演習などが両軍で行われる予定である。しかし、なぜ中国はこのタイミングで人民解放軍をベラルーシに派遣したのだろうか?

それには欧米陣営を牽制する狙いがある。ちょうど米国では7月9日からNATO首脳会合が始まり、ここで中国やロシアに対する強い懸念が示されることは間違いない。ロシアだけでなくベラルーシとも直接的な軍事交流を強化することで、欧米を牽制する意図がある。ベラルーシは7月4日、中国やロシアが主導する上海協力機構に新たに加盟し、欧米との対立を先鋭化させている。また、演習が行われている場所はNATO加盟国ポーランドと国境を接するベラルーシ西部のブレスト市であり、欧米陣営の圧力には屈しない反欧米陣営の多国間化を目指すという中国の強い意思が想像される。

そして、このベラルーシ軍との合同軍事演習から今後懸念されるのが、人民解放軍の海外派遣である。今回はあくまでも演習というが、欧米との対立が長期化する国際情勢においては、中国軍がウクライナ戦争でロシア軍を後方支援するためロシア・ウクライナ国境に派遣される可能性がある。ロシア軍の劣勢が顕著になった場合、中露が一体となった攻撃を仕掛ける可能性も排除できない。

また、ロシアにとって手薄な地域となっているシベリア極東地域においては、軍事的な空白を補うため中国軍が常設的に駐留し、日本を強く牽制する目的で北方領土の軍事開拓を強化する際に、中国軍が国後島や択捉島に足を踏み入れることも考えられる。

さらに、北朝鮮とロシアが軍事協力を含む包括的戦略パートナーシップ条約を締結する中、中国軍が北朝鮮軍を支援し、韓国や米国、日本を牽制する目的で派遣される可能性もある。中国にとって北朝鮮は米国の勢力圏拡大を抑える防波堤的な緩衝国家として機能しており、仮に北朝鮮と米国が政治的に接近するようなことがあれば、中国はすぐさま北朝鮮を引き止める策を講じるだろう。

もう一つの懸念は、ロシアやベラルーシ、北朝鮮などが尖閣、台湾、南シナ海など中国が抱える問題に絡んでくるシナリオである。無論、各国の能力には限界があるため、そこまで踏み込んだ協力ができるかは分からない。しかし、尖閣諸島や南シナ海における中国海警局のパトロールにロシア海軍が参加したり、台湾侵攻を想定した中国軍東部戦区の軍事演習に北朝鮮やベラルーシの兵士が参加したりすることで、日本を含む欧米陣営を政治的に揺さぶってくる可能性がある。

今後、現状の世界秩序を維持したい欧米陣営と、新たな秩序の構築を目指す中露陣営との対立は長期化すると考えられる。その盟主である中国としては、NATOのような集団防衛体制の確立は困難としても、友好国との間で軍事的な柔軟性を強化したいという狙いが今回の演習からは見え隠れする。

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