京阪神エリアを駆ける「新快速」…「特急よりも速い」というのは本当か 過去と現在のデータから“都市伝説”を検証

新田 浩之 新田 浩之

京阪神を走破するJR西日本が運行する新快速ですが、たまに「新快速は特急列車よりも速い」という言説を聞きます。これは都市伝説なのでしょうか、それとも真実なのでしょうか。時刻表を片手に調べることにしました。

新快速VS特急列車の勝負はいかに

対象とする区間は複々線区間の明石駅から京都駅までの上り方面。時間帯は原則として日中時間帯とします。明石~京都間の新快速の停車駅は明石、神戸、三ノ宮、芦屋、尼崎、大阪、新大阪、高槻、京都です。

明石駅から大阪駅までの所要時間は37分、明石駅から京都駅までの所要時間は68分です。表定速度は明石駅から大阪駅までは時速85キロ、大阪駅から京都駅までは時速89キロ、新大阪駅から京都駅までは時速98キロ、明石駅から京都駅までは時速84キロです。

明石~京都間を走る主な昼行特急列車は「サンダーバード」「スーパーはくと」「はまかぜ」「はるか」です。

停車駅はそれぞれの特急列車により異なります。「サンダーバード」は大阪、新大阪、高槻(一部停車)、京都です。「スーパーはくと」は明石、三ノ宮、大阪、新大阪(一部停車)、京都(一部停車)です。

「はまかぜ」は明石、神戸、三ノ宮、大阪です。「はるか」は大阪、新大阪、高槻(一部停車)、京都です。いずれにせよ、どの特急列車も新快速より停車駅が少ないことは明白です。

各特急列車の所要時間は「サンダーバード」(大阪駅→京都駅)は27分、「スーパーはくと」(明石駅→大阪駅)は33分、「はまかぜ」(明石駅→大阪駅)は38分、「はるか」(新大阪駅→京都駅)は27分です。

各特急列車の表定速度は「サンダーバード」(大阪駅→京都駅)は時速95キロ、「スーパーはくと」(明石駅→大阪駅)は時速95キロ、「はまかぜ」(明石駅→大阪駅)は時速83キロ、「はるか」(新大阪駅→京都駅)は時速87キロです。

ただし、比較で使った「はまかぜ2号」は明石駅発が9時23分であり、明石駅発9時20分の新快速は大阪駅に9時59分に到着。所要時間は「はまかぜ2号」よりも1分遅い39分です。

このように比較すると、新快速よりも遅い特急列車は「はるか」ということになります。上り「はるか」は京都駅付近でJR京都線から嵯峨野線(山陰本線)へ転線。速度制限を受けるため、時間を要してしまいます。

昔は特急列車よりも新快速の方が速かった

ここで、1997年11月の時刻表で調べてみましょう。当時、9時台土休日の新快速は明石駅から大阪駅までの所要時間は39分でした。一方、「はまかぜ2号」の所要時間は40分となり、停車駅は新快速よりも少ないにもかかわらず、新快速より遅かったのです。

「はまかぜ」は大阪と山陰を結ぶ特急列車ですが、現在もディーゼルカーが使われています。1997年当時は国鉄特急型ディーゼルカー181系が「はまかぜ」の運用に就いていました。

当時の新快速の最高速度は時速120キロ。「はまかぜ」の最高速度も時速120キロでした。ただし、キハ181系の加速度は遅く、新快速との車両性能差は明白でした。

2000年に新快速の最高速度はオール時速130キロになり、「はまかぜ」との速度差は広がりました。

2010年、現在の189系が「はまかぜ」専用車両として登場し、国鉄特急型ディーゼルカー181系を置き換えました。2012年にキハ189系の車両性能を活かす形でスピードアップが実現しました。

このように昔の時刻表を見ると、新快速が特急列車よりも速い例が現在よりも多く見られました。さらに、国鉄時代は新快速は内側線(電車線)を走り、大阪駅では特急列車の同時発車も見られました。新快速は特急列車と同じく大阪~京都間はノンストップ。所要時間は特急列車よりも新快速の方が短かったのです。

現在は「新快速は特急列車よりも速い」とは言いにくいですが、少なくとも「新快速は特急列車並み」とは言えると思います。

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