「8秒間が生死を分ける!」地震が起きた時にとっさにすべき行動とは?訓練すれば幼児もできる!専門家に聞いた【前編】

渡辺 晴子 渡辺 晴子

身を守るための安全な場所とは?

──また身を守るための安全な場所というのは?

「8秒を素早く生き抜くには、比較的安全な場所を前もって知っておく必要があります。そして、その安全な場所がテーブルの下だけではなく、落ちてこない、飛んでこない、倒れてこない、動いてこない所で、家の中や通学路などにそういうところがないかを探しておく、ということが、必要です。就学前の子どもたちでも、何度も『ぐらちゃんみっけ』(ぐらぐらしたら危なさそうな所にしるしをつけて行くゲーム)をしていくと、危ない場所、比較的安全な場所が分かってきます。 

大地震の揺れは、いつ、どこで始まるか確かなピンポイントは誰にも分かりません。ですから普段いつも生活している所で『もしここで起こったら、あそこに逃げ込む』という安全な場所を前もって決めておくことが重要になってきます。安全な場所を選ぶ基本は、物が①上から落ちてこない(ガラスなど)、②前や横から倒れてこない(本箱や塀など)、③滑って動いてこない(ピアノや車など)、④この①から③の物をしっかり受け止め、できれば体全体を守ってくれるテーブルや机などの物がある、という条件を備えた場所や部屋の何もない角が目安となります。あらかじめ、家や園・学校・教室などの中や近所の歩道・通学路などでもこの安全な場所を見つけ、いざというときの『避難場所』と決めておくとよいと思います」

──安全な場所を探して、走って、身を守るのにわずか8秒間。特に小さなお子さんに教えるのは難しそうですが。

「『じしんだ、パン!』で8秒を生きのこる練習をしていただきたいと思います。たとえば部屋の中で食事をしている時、みんなでおしゃべりしている時、お勉強している時、廊下を歩いている時などに、突然お母さんお父さんが『地震だ!』と叫んで手をパンと叩き、子どもたちは決められた安全な場所に8秒のうちに逃げ込む練習をします。逃げ込んだ後、周りでどんなに大きな音がしても動揺せず、1~5分はその場で耐えて命を守る努力をする。家だけでなく園や学校でも『じしんだ、パン!』の練習を行うことは『その時に』備えた『逃げ込む力』を培うのに大変な効き目を持ちます。

この練習は1年に1回、短くて半年に1回で十分です。私たちは、実際ある園で1年に1回『じしんだ、パン!』の練習を行ってきました。ある年、実際に大きな地震が園を襲いました。その時『8秒は頑張る』『音ではケガしない』『あわてない』ということを子どもたちは思い出し、先生が近くにいなくとも自分たちで安全な場所を見つけ、素早く移動し、大声を出すこともなくじっと揺れが収まるまで耐えることができたのです。それを見た先生も保護者も感動の一瞬でした」

事前に建物の耐震を調べておくことも大切

──安全の場所を探すといっても、今回の能登半島地震の場合、木造住宅が密集する地域で大きな揺れによる家屋の倒壊が相次ぎ、生き埋めになる人が多数いました。

「今回は大きな揺れの後、家の外に飛び出せた方はケガなどせずにすみましたが、飛び出すことが難しかった方は家の下敷きとなったケースが多く、亡くなった多くの方もこれが原因(1月10日時点)となっています。これらは、この地域がたびたび重なる大きな地震の被害に遭ってきたことや耐震性の問題が関わっています。ですから、どこの地域も当てはまるわけではありません。

私たちは過去の地震経験から多くの実践的な生きた知恵を積み重ねてきましたが、特に建物の備えは1980年以後大きく変わりました。1981年の建築基準法の改正で『大地震が来てもあわてて建物の外に飛び出さなくても良いだけの強さ』を持った建物が建てられるようになりました。つまり、必ずしも外にあわてて飛び出すより,屋内にいることの方が安全だ、という地域が多くなってきたのです。大切なことは、子どもが居るその建物が1981年の前に立てられたか否かを問うこと、あるいはそれ以前・以後に大地震に備えた改修を行っているか、1981年以降大地震に見舞われた経験があるか否かを考えてほしいのです。いつの時の建物かを前もって調べておくことが非常に大切です」

  ◇  ◇

いつどこで能登半島地震のような大きな地震が起きるか分かりません。だからこそ、清永さんに教えていただいた「地震が起きた時にとっさにすべき行動」をお伝えしました。続いて、後編では「今回の能登半島地震はどんなものだったのか」についてご紹介します。

【清永奈穂さん・プロフィール】
株式会社ステップ総合研究所長、特定非営利活動法人体験型安全教育支援機構代表理事、日本女子大学学術研究員、博士(教育学)。少年非行やいじめ、子どもが被害に遭う犯罪事件なども研究。警察庁持続可能な安全安心まちづくり検討委員会委員、内閣府「子ども若者育成支援推進のための有識者会議」委員等歴任。現在、こども家庭庁こども家庭審議会基本政策部会臨時委員。主な著書は『いやです、だめです、いきません 親が教える子どもを守る安全教育』(単著・岩崎書店2021)、『あぶないときは いやです、だめです、いきません 子どもの身をまもるための本』(単著、岩崎書店2022)、『おおじしん さがして、はしって、まもるんだ』(単著、岩崎書店2023)、『おうちでヒヤッ でない、あけない、のぼらない』(単著、岩崎書店2023)他。

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