『辰巳』『サユリ』『朽ちないサクラ』などの演技が評価されて、第16回TAMA映画賞で最優秀新進女優賞を獲得。映画だけではなく、連続ドラマ『滅相もない』『3000万』でも視聴者を釘付けに。森田想(24)の類まれなる存在感と芝居のリアリズムは、映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(2025年1月24日公開)でも存分に発揮されている。
好評価に反して本人は「自信なんてありません。食えていませんから」とクールな言葉を返してくる。言葉の裏には、ちょっとやそっとでは満足できない彼女の野心が隠されているようだ。
「食えていない」と言うワケ
俳優としての原点は、大規模オーディションを勝ち抜いて生徒役で出演した『ソロモンの偽証』(2015年)。
「オーディションが中学2年生で撮影が中3の時。10代の真ん中という多感な時期だったこともあって当時の記憶はかなり濃厚です。映画の撮影の基礎はもちろんのこと、あいさつの仕方や社会の常識をそこで全て教わりました。同じ経験をした生徒役が33人もいるので、彼らとは久しぶりの再会でも会話が弾む。共通言語が同じような感覚があります」
同作からは現在も俳優として活躍中の藤野涼子、石井杏奈、清水尋也、富田望生らが輩出されている。共通言語で繋がる同志。だが年齢が近いだけにライバルでもあるわけで。
「『ソロモン』で一緒だった人たちがどんどん売れていく中で、私には全然仕事がなかった。オーディションに受からず、高校時代は学校があったから気が紛れたけれど、卒業してからが悩ましい時期でした。売れていく人たちへの嫉妬というか、そもそも私には『売れていない』という事実があったので。もうダメなのか?と。その気持ちはまだ持っています。だから自信なんてありません。食えてませんから」
試行錯誤で終わる日々
2024年を振り返った時、充実はあるかもしれない。しかし満足はしていない。
「演技をするのは楽しいです。撮影中に監督から褒められたりして、自分としても『上手くいったかな?』と思うこともなくはないけれど、毎回試してみたいことがあり過ぎて。試行錯誤の途中で終わってしまう感覚。それを次の仕事で活かしてみるけれど、またそこで自分の中で課題が生まれる。ずっとその繰り返しです」
終わった仕事には執着しない。「一つ一つの思い出を抱きしめないタイプ」と自己分析するが、それが俳優としての森田の矜持なのだろう。
「いただいたお仕事に対して思い入れがないわけではないけれど、その思い出を抱きしめてしまったら、きっと私は浮足立ってしまう」
納得も満足もしないから常に前進するしかない。目標は「飛躍」のみ。そのために自らを鼓舞する。
「今年は公開された作品で評価されたり、初めて映画賞をいただいたりと、自分の中でうれしいことはたくさんありました。けれどそれは自分の中だけの変化であって、外側から見たら私なんて『誰?全然知らない』レベル。2025年は自分から見ても外側から見ても、誰しもに納得してもらえる動きができたらいいなと思います」