路線バスの乗降扉側の最前列の席。バスファンが「オタ席」と呼ぶこの席がないタイプの車両が増えているそうです。乗り物好きな子どもにとってこの席は前面の展望を味わえ、大きな車両を操る運転士さんのハンドルさばきを見ることができる、いわば特等席。車両の進化や安全面が理由のようですが、子どもたちにはちょっと残念かもしれません。
通常のバスよりも床面が低いノンステップバスは、乗車口ステップの高さは、道路面から30cm以下程度になるように作られています。そのため、前輪のタイヤハウスが車内に張り出してしまいます。一部の車両はその部分も座席として利用できるようにしているため、他の座席より着座位置が非常に高くなっています。これがいわゆるオタ席です。
このオタ席について「最近の路線バスは乗降扉側最前列の席がない」とXに投稿したのは、商用車メーカーの中の人(@trucknakanohito)さん。「理由は燃料タンクの位置を変更したから。オタ席を無くした事で運転席から左側の視界が開けて巻き込み確認が容易になった。またこの席からバスマニアの熱い視線を受ける事も無くなり運転手からは好評だ。」という解説が注目されました。
オタ席は減少傾向
商用車メーカーの中の人さんによると、低床タイプの路線バスでは車両更新に伴いオタ席があるタイプからないタイプに切り替えが進んでおり、バス業界では減少傾向とのこと。話を聞きました。
ーー左前方タイヤハウス上のオタ席をなくす理由は何が考えられるのでしょうか
「オタ席は高い位置にあるのですが、席に座る時や席から降りる時に転倒する乗客もいました。そうした危険がなくなったのが利点の一つでしょう。またオタ席に人が座っている状況に比べ、視界が開けるため運転士の巻き込み確認の作業が楽になったことは事故リスクを減らしたいバス会社には利点と思います」
ーーこの席からバスマニアの熱い視線を受ける事も無くなり運転手からは好評だ、という解説に驚きました。オタ席や運転席真後ろに座る人からの視線や無言の「圧」は気になるものなのでしょうか。
「圧が強いのですごく気になるとの声を聞きます。写真や動画を撮影してくる方もいて…気になりますよね。これが運転に支障をきたす可能性もあります。またオタ席をめぐってバスマニア同士が喧嘩したりと困った話が多いです」
オタ席だった空間に燃料タンクを配置することで、「タイヤハウスに伝い歩き用の手すりを設け、乗客の車内移動がしやすくなった」「車外の給油口も位置が高くなり、給油作業がラクになった」という利点も上がっています。