【危険なバス停】放置のまま「高齢の母が落ちて車道に尻餅ついた」 なぜ改修できない?

どなどな探検隊(パートナー記事)

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 「道路との段差が高く、お年寄りには危険です。実際母親が(道路に)落ちてしまいました」。京都市左京区の高野川沿いにあるバス停が危険だ、という投稿が京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に寄せられた。実際どれくらいの段差があり、どれほど危険なのか調べた。

 投稿者は左京区在住の女性(60)。女性が指摘するのは左京区川端通御蔭上ルの「御蔭橋」バス停だ。

 御蔭橋バス停には大原や岩倉方面に向かう北行きの停留所と、京都駅や四条河原町方面に向かう南行きがある。女性によると危険なのは北行きだという。

 女性の母親(83)は今夏、このバス停でバスに乗ろうとして転倒した。幸い尻もちをついただけでけがはなかったが、長女である女性は「だれかがけがしないと改善されないのか」と憤る。

 バス停に行ってみた。そもそもバス停のある川端通には、南行きは歩道があるものの、北行きには部分的にしか歩道がない。バス停は川端通と高野川の間に設置されている。バス停がある場所は本来、高野川の堤防にあたるようだ。

 乗降の様子を見ていると、バスは停留所と数十センチから1メートルほどの間隔を空けて止まる。利用者はいったん段差を降り、車道からバスに乗り降りすることが多いようだ。

 堤防上のバス停と、車道との間にある高低差はどれくらいあるのか。計測したところ、高さは約30センチあった。約30センチの段差は80代の女性にとって降りるのも、登るのも厳しそうだ。

 川端通と堤防は御蔭橋バス停からさらに北へと続いている。一つ北の「清水町」と二つ先の「蓼倉橋」の北行きバス停は、堤防に食い込む形状で設置されており、目立った段差はない。

 そもそも御蔭橋バス停はどこの組織が管理しているのだろう。バス停の面する川端通は京都市道だ。京都市左京土木みどり事務所に取材した。

 すると、御蔭橋の北行きバス停のある場所は、河川を管理する京都府京都土木事務所の管轄だという。高野川の堤防にあたることから河川敷地と定義されるためだからだ。

 一方でその北にある清水町と蓼倉橋の北行きバス停について尋ねると、京都市が京都府に堤防の占用許可を得て2013年度に工事を行い、バス停を設置したとした。

 なぜ北にある二つのバス停と違って御蔭橋は改修されないままなのか。管理者である京都府京都土木事務所は、二つのバス停同様の工事を行った場合「堤防の安全度を下げる可能性がある」と指摘する。つまり、御蔭橋北行きのバス停を改修するとなると堤防を含めた大工事となる恐れがあり、すぐには取りかかれないというわけだ。

 ではバスを運行する京都バス(右京区)はどのように利用者の安全を図っているのか。高齢者を含め、段の下で乗降をする必要があるのはなぜなのか聞いた。

 京都バスの広報担当者は「停留所に止まる際、バスがあまり近づくとバスのミラーがバス停の標柱に当たる可能性がある。一方で、中途半端な距離だと利用者がバス停から足を伸ばしてバスに乗ろうとしてしまい、足を踏み外す恐れもある。そのためいったん車道に降りてバスに乗ってもらう形で停車するよう運用している」と説明した。

 投稿者の女性に3者の回答を伝えた。女性は「今すぐ改良ができないにしても、安全なバス停になるようにこれからも検討は続けてほしい」と話した。バス停が現状のままで存在することに、あきらめのような感情が電話口から伝わってきた。

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