京都府南丹市園部町の88歳の男性がカメラ片手に全国を巡って撮影した40作品を集めた作品展が4日、同町の市立文化博物館で始まる。自身の感性が込められた写真の数々を、米寿の節目に見てもらう。男性は「写真にこもった感動を多くの人と分かち合いたい」と語る。
日下部治さん。カメラとの出合いは20数年前に遡る。大井小や園部小の校長を務めて退職後、知人に誘われて富士山の撮影に足を運んだ。マイナス4度の朝、一瞬の赤富士の威容に心を奪われたのが、「カメラにやみつきになったきっかけ」と振り返る。
以来、地元の愛好家と各地を旅しながら、北海道の神秘的な青い池や、青森ねぶた祭で生き生きした表情を見せる女性、広島県のコンビナート、野焼きする地元の日常など、心が動かされた光景にシャッターを切ってきた。「夕日などは時間との競争。1時間くらい、物も言わずに集中する」という。
2014年に長野県の湖に行った時には、御嶽山が噴火。すれ違う車が真っ黒で、噴火したと聞いて驚いた。写真にまつわる「強烈な印象の出来事の一つ」という。
撮影は簡単ではない。ばっちりと思った写真が後でピンぼけだったこともあるが、「失敗しつつも、作品を仲間と見せ合い、感動を分かち合えるのがうれしい。仲間とカメラで遊び、旅する過程も素晴らしい」と話す。
8日までの作品展は、自身が名付け、同好の士でつくる「撮朗(とろう)会」が主催。京都市の紅葉の下を走る人力車や有明海の夕日など自身の40作品に加え、メンバーの作品7点が並ぶ。無料で午前9時~午後5時。「捉えた感動を来場者に少しでも受け止めてもらえたら、この上ない喜び」とし、来場を期待する。
90歳が近づく今も意欲は旺盛で、今秋はヒガンバナや紅葉の写真を撮りたいという。「家族には『年を考えてや』と言われるが、カメラが元気の源」と笑う。