京都府道・全2184キロを愛車カローラで走破 「獣と遭遇することはあっても人の気配は…」挑戦者びっくり過酷コースも

京都新聞社 京都新聞社

 北は丹後、南は山城地域に至る「京都府道」の全ルートを走破した男性がいる。

 総延長2184・9キロ。

 要した期間は2年9カ月。

 意外なことにその人は京都府民でもなんでもない。だったらどうして、こんな風変わりな挑戦を思い立ったのだろうか。

 兵庫県丹波篠山市のシステムエンジニア、小林俊哉さん(59)が府道走破に挑み始めたのは2020年2月2日。新型コロナウイルスの感染者が日本で初めて確認された頃のことだ。

 小林さんは夜ごとグーグルマップで走行ルートを予習し、週末になるとトヨタ社製の愛車カローラアクシオに乗り込んだ。

 現地のグルメやレジャーには目もくれず、ただひたすらアクセルを踏んだ。

 カーナビのない殺風景な車内によく流れていたのは、α―STATION(FM京都)の人気番組「J―AC TOP40」。

 独りぼっちで何時間も車を運転するのは心細かったが、大好きなディスクジョッキー、キヨピーこと谷口キヨコさんの声を聞くうちに不思議と元気がわいてきた。

 京都府道には1号から803号まで番号が振られている。そのうち505路線は他路線との統合などで欠番状態になっており、実際の路線数は298にとどまる。

 高速道路や国道に比べるとマイナーな存在に違いないが、京都市の中心部を貫く堀川通(38号 京都広河原美山線)や三条通(143号 四ノ宮四ツ塚線)も、実は京都府道の一部だ。

 もちろん、小林さんが走破したのはこうした整備の行き届いた道ばかりではない。とりわけ、山間部の狭くて未舗装の道を走ったりする際は神経をすり減らした。

 最近はユーチューブでも対向車と離合できないような公道をあえて走行する動画が注目を集め、こうした人気動画のタイトルには「酷道(こくどう)」「腐道(ふどう)」「険道(けんどう)」といった造語が並ぶ。

 中には途中区間の整備が手つかずで、道の両端から2回に分けて走行しなければクリアできない難関ルートもある。

 府内にはこうした分断区間を有する府道がおよそ30路線存在する。小林さんも狭い道の行き止まり部分でUターンを余儀なくされ、車体をこすってしまったこともある。

 「落ち葉とか雑草で道が埋まり、わだちを確認できないような所もあった。シカやリスと遭遇することはあっても人の生活感は皆無。『もしもここで身動きできなくなったらどうしよう』と不安が募った」と振り返る。

 そんな怖い思いをしてまで、兵庫県民の小林さんが京都府道を走破しようと思ったのはなぜか。

 小林さんは子どもの頃から電車に揺られるのが大好きな「乗り鉄」だった。大学時代には国鉄(当時)の山陰本線や山陽本線、東海道本線を走破し、関西圏の私鉄も乗りつぶした。

 結婚してからは主な移動手段が子連れで出掛けやすい車に変わった。だが、何事もやり遂げないと気が済まない性格はそのままで、西日本高速道路が主催するスタンプラリーや近畿圏の道の駅120駅を巡るイベントを制覇した。

 2015年4月からは兵庫県道走破に目標を定めたが、一部路線が工事中だったので狙いを京都府道に切り替え、チャレンジを続けた。

 ちなみに、京都府道のラストを飾る801号、802号、803号はいずれも自動車で走ることのできない自転車道だ。

 小林さんは近くのレンタサイクルで自転車を借り、足がつるトラブルにもへこたれず、最後までペダルをこぎ続けた。

 小林さんは「自分は何かを最後までやり遂げて達成感を味わうことが大好き。今回の挑戦は想像した以上にハードでしんどかったが、無事に達成することができて本当によかった」と話している。

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