悪いのはどっち?「ゼブラゾーンを避けて右折レーンに入ったら、直進してきた車にぶつかった」→「知らない人が多いですよね」

太田 浩子 太田 浩子

 「右折レーンの手前にある斜線部分(ゼブラゾーン)を避けて右折レーンに入った車が、ゼブラゾーンを踏んで直進してきた車にぶつかったら、悪いのはどっち?」

 そんな解説動画を、滋賀県大津市の自動車教習所「ツキノワプロダクション(from 月の輪自動車教習所)」(@tsukinowapro)が投稿して注目が集まりました。

 ゼブラゾーンの正式名称は「導流帯」で、警視庁によると「車両の安全かつ円滑な走行を誘導する」目的で、「車両の走行を誘導する必要がある場所」に設置されます。つまり、動画の場合なら、直進と右折レーンを間違えないように設置されています。

 解説動画に戻りましょう。教習所では、ゼブラゾーンを避けて右折レーンに入るように習った方も多いと思います。その通りに右折レーンに入ろうとしたら、右後ろからゼブラゾーンを踏んで直進してきた車にぶつかってしまいました。

 この場合、悪くなるのはゼブラゾーンを避けて右折レーンに入った車になってしまいます。「ちゃんとゼブラゾーンを避けたのに!?」と思いますが、保険会社の基本過失割合は、70%対30%が一般的です。動画で解説しているトラフィック・プロフェッサーKさん(以下、TPKさん)さんに詳しいお話を聞きました。

──ゼブラゾーンを避けて運転するのが正しいと思われている方も多いと思います。それなのに、ゼブラゾーンを踏んできた車とぶつかったら自分の方が悪くなってしまうなんて…。教習所で入ってもいいとは教えられないのですか?

 導流帯は、「安全かつ円滑に車を誘導するために設けられた、車が通らないように設置してある部分」なので、車が走行する目的で設定されていません。なので、当教習所では「通る」とは指導できない、と考えます。

──それなのに「通っても良い」となるのは、なぜなのですか?

 「流れ」に導く、の流れとは、直進と解釈し、その流れに乗るつもりはない。元々右折のつもりだから…と解釈して、最初からゼブラを踏んで右折車線に入る解釈もわかります。実際、導流帯を走行することにより、道交法上処罰の対象になることはありません。立入禁止部分や安全地帯とははっきり区別されています。

 結局のところ、道交法第一条の【目的】この法律は道路における危険を防止し、その他…を個々のドライバーが考慮しているか、にかかっていると思います。

──リプライを見ると、導流帯を踏むように教習所で指導されたという方もいらっしゃるようです。

 私個人的な意見として、それはあくまで「この状況なら」という言葉が省略されており、「世の中全ての導流帯を踏んでいこう」と指導員は言いたいわけではないと考えます。しかし、教習生の立場で「踏みましょう」と指導されたら、その後の人生において「全ての導流帯は踏んでもいいんだ。だって、そう教わりましたよ」と解釈するでしょうし、実際そう習った、というコメントは多いですね。

──どこでも踏んでもいいという解釈だと、導流帯の設置場所によっては危険なことがありそうです。「ウインカーをきちんと出していれば、ゼブラゾーンを踏んで直進してきた方が悪いのでは?」と言う人もいました。

 「白が黒か絶対的な答え」を導こうとしても、この問題は無理なのです。導流帯を避けて右折車線に入るのであれば、右に進路を変える以上、3秒前合図と右後方の確認義務が発生しますし、導流帯を踏んでいる立場なら、左前方の車が右合図を出しているのであれば、合図車を妨害してはいけない義務が発生する以上、進入車両を警戒する義務が発生します。

 どちらの車がどの位置にいるか、進入車両の合図はいつだったのか、どちらの進行が位置的に「妨害」に当てはまるのか。そもそも両者とも道交上第一条の「安全」を考慮して、事故防止措置をとったのか?そこに「自分が優先という意識」がなかったのか…など。

 根本的な「事故を防ぐ」精神の中で少しでも「自車優先意識」が芽生えてしまったら、そこには間違いなく「過失」が発生するものと考えます。

 ◇ ◇

 過失割合やどちらが悪いということに目が行きがちですが、それが「自車優先意識」になってしまう原因かもしれません。どうしたら安全なのかを考えて運転する、という意識を大切にしたいですね。

「法の落とし穴ばかりに目を向けて、お互いの過失の大きさを争うのではなく、グレーゾーンにおける『事故を防ぐ対処方』の引き出しがたくさんある方こそが、優れたドライバーだと私は考えます」(TPKさん)

 TPKさんは、X(ツイッター)やユーチューブで、運転知識をわかりやすく解説しています。失敗しない車庫入れ解説もあります。

■月の輪自動車教習所ホームページ https://www.tsukinowa.co.jp

■ツキノワプロダクション(from 月の輪自動車教習所)X(ツイッター) https://twitter.com/tsukinowapro

■ツキノワプロダクション【月の輪自動車教習所公式チャンネル】YouTube https://www.youtube.com/@tsukinowaproduction

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