「当番は大変」というイメージだけで、子どものスポーツが敬遠されている!?…専門家に聞いた実態

谷口 輝世子 谷口 輝世子

 近年、子どものスポーツの場におけるお茶当番の負担がクローズアップされている。実際に大きな負担を担っている保護者がいるだけでなく、「当番は大変」というイメージによって、子どものスポーツ活動を敬遠している保護者がいることがわかってきた。

  笹川スポーツ財団は1月26日に、子どものスポーツ活動に対する保護者の関与の実態や意識についての調査の二次分析の結果を発表した。これによると、子どものスポーツ活動を高頻度・長時間の当番でサポートする母親が一部にみられる一方で、当番等に対する大変なイメージにより、家庭によっては「スポーツが選ばれない」可能性が示唆されたという。

「当番は大変」というイメージだけで、スポーツが敬遠されているとしたら、子どもが何かを経験する機会を逃すという観点から、もったいないといえるのではないか。

  それでは、このようなイメージはいったいどこからきているのだろうか。イメージだけで判断する保護者が悪いのだろうか。また、このようなイメージは払拭できるのだろうか。この調査を担当した同財団政策ディレクターの宮本幸子氏に話を聞いた。

 

  宮本氏は「メディアの影響というよりは口コミかもしれません。いわゆるママ友の間で伝わっていくということがあるかと思う」と言う。

  しかし、口コミに頼る保護者だけが悪いのかといえば、そうではない。宮本氏によると、ボランティアのコーチや保護者の善意で成り立っている子どものスポーツクラブやチームの場合は、もともと情報発信が不十分なことがあり、保護者の役割が明記されていないことが多い。宮本氏は「当番はありませんと書いてあるのに、入ってみたら、必須だったということがある。そうなると、親同士の口コミが頼りになるという実態がある」と話す。

  営利を目的とせず、関わる大人の善意で活動が成り立っていることもあって、内輪のコミュニケーションに偏りがちな傾向があるようだ。保護者の役割について明文化していなかったり、決まりごとがあっても対外的にわかりやすい形で伝わっていなかったりする。これらがイメージだけで敬遠することにつながっている。

 保護者の役割を明確にして発信し、参加する全ての保護者が引き受けるべき仕事や、やりたい保護者だけが担う役割をわけていくことなどが、改善の手段として挙げられる。ただし、宮本氏は、「みんなが同じだけ負担しなければ不平等だという意見は保護者から上がってくる」としており、できる人ができる範囲で負担するという運営は実際には難しい面があるのも事実だ。

  情報発信を含む運営方法を整備することは、お茶当番問題にテクニカル的にアプローチするものといえるが、高頻度・長時間の負担を背負っている母親がいることは確かで、同時に、なぜ、長時間の練習が必要なのかという本質にも向き合わなければいけないだろう。

  宮本氏は長時間の活動は、保護者の長時間の当番や大きな負担につながっているとし、「長時間練習しているところは、保護者の負担も大きい。長時間練習して勝ち上がることが必要なのかということを考える必要がある」と言う。

  「子どものため」として、多くの練習試合やイベントが詰め込まれやすいが、こういった長時間の熱心な保護者のサポートが、勝たなければいけないという重圧を小学生の子どもにかけることにつながっていないか。チームやクラブの運営者は、振り返ったほうがよいのかもしれない。

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