米下院・新議長も「台湾訪問」を計画か 中国・習政権の反発必死…懸念される軍事的緊張

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もうすぐロシアがウクライナ侵攻を開始して1年となる。米国のオースティン国防長官は2月14日、ウクライナ軍が春にもロシア軍へ大規模な攻勢を仕掛けると指摘した。今後桜が咲くあたりに、ウクライナでは戦闘が激化している可能性がある。一方、台湾でも不穏な情勢が続いており、今後はいつ軍事的緊張が再び走るかが懸念される。

そのような中、今月7日、ハリー・ハリス元インド太平洋軍司令官は下院軍事委員会の公聴会で台湾有事の可能性について言及し、中国が2027年までに台湾に侵攻する可能性があると警告した。また、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官も2月2日、習国家主席が2027年までに台湾侵攻を成功させるための準備を人民解放軍に指示したとする情報を入手していると明らかにし、中国への警戒感を滲ませた。

こういった発言を我々はどう理解するべきだろうか。確かに、習国家主席は台湾独立を阻止し、そのためには武力行使も排除しないとしており、2027年とは習政権3期目が終わる年であり、我々は1つの重要なタイミングとみるべきだろう。

しかし、ハリス元インド太平洋軍司令官のように、軍人、米軍関係者が議会で発言する場合、国防省の予算獲得などペンタゴンの利益に繋がるようあえて脅威を強調して発言するという場合もある。我々は2027年を1つのタイミングとして重視する一方、発言の裏にある諸事情も配慮し、冷静に分析、認識する必要がある。

また、中国当局は2月13日、停止していた台湾産品の輸入を再開する方針を明らかにした。蔡英文政権下で中台関係が悪化する中、中国は経済制裁として台湾産の柑橘類やパイナップル、高級魚ハタなどの輸入を次々にストップした。関係が冷え込み中での輸入再開という中国による一種の緩和策には、どんな狙いがあるのか。

当然ながら、これによって中台関係が雪解けに向かう可能性はなく、一種の演出と捉えるべきだろう。台湾では来年1月に総統選挙が実施されることから、台湾に緩和策を示すことで反中国的な台湾世論が拡大しないよう抑える狙いもあると考えられる。中国としては、親中的な候補者が勝利することを望んでおり、その動向を注視している。しかし、2023年が実質選挙戦になるわけだが、今後蔡英文路線を継承する候補者が優勢になればなるほど、中国はより強硬な姿勢に転じるだろう。今回の輸入再開が再び停止に逆戻りする可能性もある。

一方、米国メディアは1月下旬、1月3日に新たな米下院議長に選出されたケビン・マッカーシー議員が今年春にも台湾を訪問する計画があると報じた。現在、それ以上詳しいことは分かっていないが、昨年8月はじめに当時のペロシ米下院議長が台湾を訪問した際、中国はそれへの対抗措置として台湾本島を囲むように大規模な軍事演習を実施し、大陸からは多数のミサイルが周辺の海域に打ち込まれた。一部は日本の排他的経済水域にも落下した。

中国は既に訪問を自粛するよう反発しているが、仮に、マッカーシー下院議長が台湾を訪問すれば、習政権は国内向けにも強い姿勢で対抗することを迫られ、昨年8月のような、もしくはそれ以上に軍事的挑発を示してくる可能性が濃厚だ。今後の台湾情勢では、ひとまずはマッカーシー下院議長の動向がポイントになりそうだ。

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