世界に中国“秘密警察”のネットワーク…日本でも2カ所の拠点か 在外中国人を利用したスパイ活動も懸念

治安 太郎 治安 太郎

スペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ(Safeguard Defenders)」が発表した報告書によると、習政権が海外に在住する中国人を監視し、場合によっては強制帰国させるため、日本を含む欧米諸国など53カ国102カ所に「中国警察派出所」を設置しているという。まさに“秘密警察”のネットワークが無断で置かれているような状態だ。

中国警察派出所は政権に批判的な在外中国人の言動や行動を日々チェックし、場合によって強制的に帰国させることを任務としているという。報告書は在外中国人への人権侵害に留まらず、共産党政権によるこうした活動が国際法の原則に違反し、第三国の主権を侵害していると警鐘を鳴らしている。すでに、米国やカナダ、ドイツやオランダなど欧米各国で設立され、日本でも東京と愛知の2カ所に拠点があるともいわれている。

セーフガード・ディフェンダーズには1月にも同様に、中国政府が2014年以降、政権批判を続けたとして在外中国人1万人あまりを強制的な手段で帰国させ、そのうち過去2年間で帰国させられた中国人は2500人あまりに上ると明らかにした。また、それに至る経緯で、監視対象者の家族や親族がなどが国内で不当な嫌がらせなどに遭っているケースも横行している可能性が指摘された。

そして、昨今これが国際的な物議を醸し出している。たとえば、米連邦捜査局(FBI)レイ長官は11月中旬の上院安全保障委員会の公聴会で、中国が国内法的に違反する形で中国警察派出所を設置していることは米国の主権侵害にあたり、国内に中国の警察署が存在していることはすでに把握していると強い懸念示した。これに対し、米国にある中国大使館は、在米中国人に対して運転免許書の更新や健康診断の受診などの社会福祉サービスを支援しているに過ぎないと反論している。

米中対立や台湾を巡る緊張が激しくなる中、今後習政権は中国警察派出所を利用して在外中国人への圧力を強めることになろう。最近、中国国内外では反ゼロコロナを巡る抗議活動が一斉に広まったが、それは習政権への社会的経済的不満が極めて強く、自由や平等など開放的な中国を求める人民が若い世代を中心に増加していることを意味する。

しかし、中華民族の偉大な復興、中国式現代化を目指す習政権はそれに屈せず、反政権的な人民に対して取り締まりを強化することだろう。特に、一帯一路によって中国の影響力が強い国々では、中国政府による監視活動、強制帰国などが欧米に比べに簡単に行われる可能性が高い。

そして、欧米など中国が対立する国々では、中国警察派出所は自国民への監視だけに留まらず、たとえば、在外中国人を利用したスパイ活動を展開することだろう。各国の外交、軍事、安全保障など機密情報だけでなく、最先端半導体など先端技術に関する情報を入手するため、元政府職員や企業幹部、安全保障専門家などと個人的な友好関係を構築するべく、パーティーに招待したり、お土産を渡したりと大胆な行動を取ることが予想される。

これは、実は日本がもっと危ないところだ。欧米に比べ、日本人の平和ボケは深刻で、スパイ活動や安全保障などは日本が最も苦手とする分野だ。当然、そういった人材は十分に育成されておらず、専門的に扱える部署やネットワークもまだまだ薄い。中国警察派出所は1つのケースに過ぎない、日本国内で中国やロシアとの非武力的な戦争は日常生活の中で始まっているのだ。

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