インド太平洋地域で中国を包囲するかのような欧米陣営の結束が強まっているなか、重要な統計結果が最近公開された。東京に拠点を置くシンクタンク「言論NPO」と中国国際出版集団が20日、第17回日中共同世論調査の結果を発表した。それによると、日本に対してイメージが「良くない(どちらかといえば良くないを含む)」と答えた人が全体の66.1%となり、前年比で13.2%も増加し、「良い(どちらかといえば良いを含む)」と答えた人は前年比13.2%減の32%となった。また、日中関係を「悪い」と答えた人も20%増の42.6%に上った。
一方、日本側で中国のイメージが「良くない(どちらかといえば良くないを含む)」と答えた人は前年比1.2%増の90・9%に達し、「良い(どちらかといえば良いを含む)」と答えた人は前年比1%減の9%となった。また、日中関係を「悪い」と答えた人は0.5%増の54・6%となった。
上述の数字のように、日中関係は政治レベルだけでなく国民レベルでも悪化していることが鮮明となった。もちろん1つのアンケート結果であり、これを鵜吞みにする必要はないかも知れないが、日中関係を読み解く上での重要なバロメーターであることは間違いない。ではなぜ、ここまで国民感情が悪化しているのだろうか。いくつかの理由が考えられる。
まず、政治的な問題がある。中国による新疆ウイグルや香港、そして台湾への姿勢を巡って、バイデン政権になって以降さらに対立が拡大している。英国やフランス、オーストラリアやカナダなど欧米諸国がここまで短期間のうちに対中国で結束を固めることはこれまで見られなかったが、このような米中対立の拡大が日本国民の対中感情を悪化させた可能性が高い。この対立の中、日本は政治的にも経済的にも極めて難しい立場にあるが、安全保障上、米国側に立つことは明らかであり、それが日中関係を複雑化させている。仮に、日本がクアッドだけでなくオーカスに加入するとなれば、日中国民レベルの感情はさらに悪化することは想像に難くない。今回の統計でも、日中関係の悪化は尖閣諸島を巡る情勢だと回答する人々が多くいた。
また、新型コロナウイルスの感染拡大を巡って、中国が真相解明で国際社会が納得する姿勢・行動を見せないことがある。これを巡ってはおそらく中国以外の国は同じ意見だろうが、日本でも感染拡大で大きな被害が出ており、真相解明を願う国民が大半だろう。
そして、これに関連するが、新型コロナウイルスの感染拡大によって相互の往来(旅行やビジネスなど)がほぼできなくなり、直接対面での交流や意見交換が事実上できなくなったことも影響しているだろう。そうなれば、多くの国民はテレビや新聞で流れる報道のみを頼ることになり、中国を巡る政治対立などによって日中関係を判断してしまうことになる。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大がこのまま収束すれば、日中の人々の往来も徐々に再開し、相互のコミュニケーションが増え、日中関係の改善に繋がる可能性はある。しかし、現在の政治対立は決して甘いものではなく、日中関係の長期的悪化を促進する恐れがあり、有事や在中邦人の保護・安全などさまざまなリスクについて考える必要がある。