「桃太郎」って実はこんな話!? おとぎ話を深堀りし、謎や伏線を徹底的に回収した漫画『新説・桃太郎』が話題に

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

「桃太郎って実はこういう話だったんじゃないか」

漫画家のおのでらさん(@onoderasan001)がそんなテーマで描いた、『新説・桃太郎』が話題です。

『桃太郎』といえば、日本では知らない人はいないほど有名なおとぎ話。桃から生まれた桃太郎という青年が、犬・猿・雉を従えて鬼ヶ島に行き、悪い鬼を退治するという、痛快なヒーローもののお話です。

おのでらさんはそのストーリーを徹底的に考察。謎や伏線などを見事に回収した独自の物語を作り出しました。

どのようなお話かというと――。

衝撃の真実…桃太郎は人間と鬼のハーフだった!?

昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

ここまでは、従来の『桃太郎』と同じです。しかし、ここから大きく様相が変わります。

実はおじいさん、あろうことか山で若い鬼の女性と逢引きをしていたのでした。そしてとうとう、彼らの間に子供ができてしまいます。

予想外の事態におじいさんは困りました。子供は鬼と人間のハーフ。

「村の皆から、きっと忌み子として扱われてしまう…」

おじいさんは悩んだ末、子供を捨てることに。鬼の女性が用意した“クソでか桃”に赤子を入れ、川に流してしまいました。自分の罪深さを感じ、また流れ着いた先で子供が元気に育ってくれることを願いながら――ところが。

なんと、おばあさんがその桃を川下で見つけ、家に持って帰ってきてしまいました。

仕方なく、子供は自分たちの手で育てることに。桃太郎はすくすく育ちます。鬼の血のおかげで、15の頃には誰も敵うものがいないほど腕力自慢の青年になりました。

しかし、またも問題が起こります。桃太郎のおでこに、鬼の特徴ともいうべきツノが生えてきてしまいました。鉢巻きでごまかしたものの、このままでは彼が鬼の子であることが人々にバレてしまうのは時間の問題です。

「はやくこの村から出て行かせないと…」

おじいさんは密かに思い悩みました。そんな時、桃太郎はある決心を語ります。

「鬼ヶ島に鬼を退治に行きたい」

おじいさんにとって、それは願ってもないことでした。桃太郎を応援するようにみせかけて、彼を家から追い出すように仕向けます。またも罪の意識に苛まれながら…。

何も知らない桃太郎は、おばあさんに作ってもらったきびだんごを持って、意気揚々と旅立っていくのでした――。

鬼退治に向かうまでの知られざる裏事情。さらに、旅に出てからも、「獣と話ができる」など、桃太郎にまつわるさまざまなことが明らかになっていきます。

ついに鬼ヶ島に着いた桃太郎。自分が鬼の子であることと、おじいさんが自分を旅に出させた本当の理由を知ることになるのでした…。

リプ欄にも絶賛の声。原作と比較する人も

おのでらさん独自の解釈で、より深いところまで矛盾なく描かれた『新説・桃太郎』。

自分は本当は鬼の子だった――という真実を知らされたりなど、少々残酷な展開もありますが、しかし全体の作風はとても穏やかで、鬼が実はいい奴だったと思わせるような場面もあるなど、読んでいて優しげな印象も受けます。

ツイートのリプ欄でも、絶賛する声がたくさん寄せられました。

「全てに納得する。もはやこれが正しいとさえ思えてきた」
「色々とつじつまが合う」
「鬼さん良い人(?)過ぎる!!!」
「既知の物語をここまで面白くできるのも才能が満ち溢れてますね。絵も上手いしテンポも良い。素晴らしい作品を見せていただいてありがとうございました!」
「桃の中の桃太郎はなぜ無事だったのか、なぜ鬼との戦いにきびだんご1つで参加したのか、なぜ少人数で鬼ヶ島の攻略に成功したのか、など、桃太郎を読むと惹起される様々な疑問を解決しているところが面白いです」

また、「桃を食べたらおじいさんとおばあさんが若返った」、「桃太郎は、お爺さんとお婆さんの実子だった」など、本来の通説について紹介する方も。確かに、原本の内容と、比較して読んでみるのも面白そうですね。

ちなみに、筆者は漫画を読んで、桃太郎の由来とされている歴史上の出来事を思い出しました。桃太郎伝説の起源には、「大和朝廷の吉備津彦命(キビツヒコノミコト)が、当時吉備の国(岡山地域)を支配していた首領・温羅(うら)を攻め、その地を平定した」という史実があるそうです(諸説あります)。

鬼のモデルとなった温羅ですが、確かに強奪などの悪行をはたらいていた、とも伝えられています。しかし一方では、温羅は人々が豊かで平和に暮らせるような政治を行っており、実は善い人物だったのではないか、という説もあるそうです。善悪は見方や語られ方で変わってしまうものであり、本当の意味でそれを見極めるのは難しいものなのかもしれないですね。

もしかしたら、悪と思われている者でも、見方を変えれば善にもなり得るのかもしれない――漫画での情深さを感じさせる鬼の描かれ方に、筆者はそんなことを思いました。

このように、筆者も含め、それぞれがそれぞれの方法や解釈の仕方で、作品を楽しんでいます。

おのでらさんにお話を聞きました。

――今回の話を描いたいきさつについて教えてください。

おのでらさん:学生の頃に話を思いついて、面白いネタなので漫画を描く力が身についてから描きたいなと思っていたら10年以上経っていました。連載が落ち着いたタイミングだったので今回描き上げることができました。

――長い間温めていたストーリーだったのですね!作品について、「おじいさんが元凶」というような声もありましたが(笑)、基本的にはそこまで悪い人がいなく、とても“優しい世界”だと感じました。

おのでらさん:特に意識はしていないのですが、シリアスやバッドエンドみたいな物語でも、“登場人物が納得のいく行動をとった結果そういう結末にたどり着いてしまった”みたいなストーリーが好きなので、あまり理不尽な悪人を出さない傾向があるのかもしれないです。

――「桃がモチーフになった理由」についてなど、コメントでも桃太郎にまつわる色々な逸話・裏話があがりましたね。面白いと感じたものはありますか?

おのでらさん:少し残酷ですが、桃ではなく川を流れてきた妊婦の死体から子供を取り出したという説は確かにありそうで面白かったです。

  ◇  ◇

おのでらさんは、昨年12月31日の「冬コミ」2日目(西1と20b)にて、今回の『新説・桃太郎』も掲載されている新刊を販売。Twitterで公開されている内容に加え、桃太郎が帰郷するラストシーンを含めたフルバージョンで収録されています。

また、今回のストーリーを考えたきっかけについて触れている『物語の裏を考えてしまう話』という漫画が、Twitterで公開されているほか、書籍『コミケ童話全集』の3巻に収録されており、「そちらも是非読んでみてほしいです!」とのことでした。

■おのでらさんのTwitterはこちら
 →https://twitter.com/onoderasan001

■『物語の裏を考えてしまう話』はこちら
 (Twitter)
https://twitter.com/onoderasan001/status/1605880802381701120
 (書籍『コミケ童話全集』)
 →https://amazon.co.jp/dp/4046020075/

■冬コミ(コミックマーケット)の情報はこちら

 →https://www.comiket.co.jp/

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