フォロワーさんのさまざまな体験談を漫画にして、ツイッターで紹介されている、漫画家のしろやぎ秋吾さん(@siroyagishugo)。『ちょっと怖い話』として紹介したエピソードが「ちょっとどころか怖すぎる」と話題になっています。
場面はとあるショッピングモール。
泣き叫ぶ女の子。女性がその子の手を引っ張り、「早くおうち帰るよ!!」と怒っています。最初、周囲はその姿を、駄々をこねる幼子を母親が叱っているのかな、とほほえましく見ていました。
さらに、父親らしき男性が、「おやつなら後で買ってやるからな」とその子を抱きかかえ、連れて行こうとします。女の子はさらに抵抗、近くにいた若い女性に「助けて!」と叫びます。「何か変だな」と感じたその女性、その女の子に聞いてみました。
「おじょうちゃん、この人たち知ってる人?」
すると、女の子はこう言いました。
「 知 ら な い 人 で す 」
実際に連れ去られそうになった人の体験談
思いもよらなかった展開。女の子を連れていこうとしていた人は親ではなく赤の他人だった――つまり女の子は誘拐されそうになっていた、という話だったのですね。
しろやぎ秋吾さんによると、今回のエピソードは投稿者さんが幼い頃に実際に体験したことだそう。ツイートには、投稿者さんが書いた体験談の原文も公開されています。
体験者さんによると、これは14年ほど前、郊外の大型ショッピングモールで起こったことだとのことです。当時小学2年生だった投稿者さんは、家族と離れて一人でトイレに行き、戻ろうとしたところで見知らぬおじさんとおばさんに声をかけられ、連れ去られそうになったとのこと。
たまたま目が合った女性に「助けて!」と叫んだことで、警備員を呼んでもらえました。その後、誘拐しようとしてきた2人組は連れていかれ、投稿者さんは家族と再会できたとのこと。
無事で済んだとはいえ、「泣いていても、周囲からは子どもがわがままを言って泣いていると思われ、なかなか助けてもらえなかった」といった主旨の記載もあり、投稿者さんがいかに怖い思いをされたのかが分かります。実際、投稿者さんは、「あの時私たちのことを『変だな』と思って見てくれる人がいなかったら」と思うと、今でもぞっとするといいます。
作者のしろやぎ秋吾さんに聞きました。
――今回のエピソードを漫画化された理由を教えてください。
しろやぎ秋吾さん:普通にみたら子どもが駄々をこねているだけのほのぼのな場面が、実はそうじゃなかったところが怖いと思ったので。
――投稿者のエピソードを読んでどのように感じられましたか?
しろやぎ秋吾さん:自分にも当時の投稿者さんと同じくらいの歳の子どもがいて、外出時1人でトイレに行かせることがあったので気をつけないといけないな、と思いました。
――今後、このような事態に対して、どんな対策をしていこうかと思いましたか?
しろやぎ秋吾さん:客観的にみたらよく見かける場面だと思うし、自分から声を掛けるのもだいぶハードルが高いと思います。だけど今までよりちょっと注意してどんな会話をしているのか聞いておこうと思いました。
実際に現場を見ても判断は難しい…悲劇を防ぐには?
思わぬ場面で誘拐に遭いそうになった、という恐怖体験を描いた今回の漫画。ツイートのリプ欄にも多くの反響が寄せられました。
「幽霊とかよりもこういうリアルにありそうな(あった)お話の方が流石に怖いですね」
「堂々とした人攫い怖い」
「遊園地の怖い話あるあるによく似た話ですね」
「平然と違和感なくやっている手慣れた感じが一番ゾッとする」
実際に、このような手口での誘拐事件は意外と身近で起こっていることのようです。一大テーマパークでも同様の事件が起こっているほか、車椅子の子どもを介助者のふりをして連れ去ろうとしたり、「人身売買」や「臓器売買」目的で海外に売り飛ばされたりといった事例もあるなど、なんとも恐ろしい話です。
「気をつけなければ」という声がある一方で、「実際に誘拐されそうになっているのか、帰りたくない子どもが嘘をついているのか、見分けることができるのだろうか」といった懸念の声もたくさんありました。
現に、リプ欄には、「弟が母におもちゃを買ってもらえなかった時に、『知らない人!』と喚いていた」、「子どもがパパにだっこされた時に癖で『助けて!』と叫ぶ」というような声もありました。実際にそのような現場に遭遇したとして、事件性があるのかどうなのか、とっさに判断はつきにくいのかもしれません。もちろん、誘拐犯はそのことも見越したうえで、卑劣な手口の犯行に及ぶわけです。
この件ついては、「違和感を感じたなら警備員呼ぶべき」という意見もありました。
確かに、ショッピングモールなどの施設には、店員や警備員といったスタッフがいます。自分で判断するのではなく、相応しい第三者に対応を委ねるというのが、もっとも適切な選択なのかもしれません。
さらに、このような時のために、子どもに「助けて」という意味をもつ“ハンドサイン”を教えては――というような声もありました。
ハンドサインとは、手や指の動きで自分の意志や気持ちを周囲に伝える手段のこと。
「手のひらをみせる→親指を折り曲げる→残りの指を親指を閉じ込めるように折り曲げる」
これで「助けて」という意味になります。声が出せないような状況でも使うことができるうえ、このサインは世界共通であり、言語の異なる海外でも通じます。
このようなハンドサインは、犯罪の悲劇を防ぐうえで、とても有効な手段の一つになりそうです。もちろん、そのためには、周囲の大人がこのサインの意味を知っておくことも大切でしょう。
作者のしろやぎ秋吾さんも、「ハンドサインのリプが印象に残りました」と話していました。
◇ ◇
とても身につまされる漫画…。小さい子どもやそのご家族の方にとっては他人事ではなく、周囲の方も気をつけなくてはならないお話ですね。
しろやぎ秋吾さんは、今回の「ちょっと怖い話」をはじめ、フォロワーさんからのさまざまな体験談をSNSやブログで募集、漫画化しています。また、フォロワーさんの恐怖体験をまとめた書籍『フォロワーさんの本当にあった怖い話』も2巻まで販売中とのことです。
■しろやぎ秋吾さんのTwitterはこちら
→https://twitter.com/siroyagishugo
■しろやぎ秋吾さんのブログ「しろやぎの漫画おおめブログ」はこちら
→https://siroyagishugo.com/
■書籍『フォロワーさんの本当にあった怖い話(2)』はこちら
→https://www.amazon.co.jp/dp/4575317349