天文台が研究費不足→宇宙大好き10歳息子がお小遣いで支援 天文学者から感謝の手紙に親子で大興奮するも「研究者が夢を持てる国になれば」

宮前 晶子 宮前 晶子

宇宙が大好きな小学生の男の子が、研究費のためクラウドファンディング(以下クラファン)に支援金を送ったら、憧れの天文学者からお礼のメッセージが!まるで漫画や映画のような展開が話題を呼びました。

「国立天文台がクラファンしているのを知ったとき、10歳の息子が「研究を応援したい!」と言ってきたので、息子もお小遣いから一部出して、将来研究者を目指している旨のメッセージを添えて支援したんだよね。そしたら後日、所長から個人的にお手紙来たの。直筆で「夢を目指して頑張って」と。」

「もう、めちゃくちゃ嬉しかったよね。息子は大喜びしてた。憧れの天文学者さんからだもん。大興奮だよね。 私も涙出るくらい嬉しかった。研究を応援したつもりだったのに、逆にこっちが応援されて…。 子供が研究者を目指せるような国であって欲しい。」

SNSで明かしたのは沖本正太郎(10歳)くんのお母さん。2人に詳しいお話を伺うとともに、クラファンを行った国立天文台 水沢VLBI観測所(岩手県奥州市)の本間希樹所長にコメントをいただきました。

憧れの天文学者からの言葉に大はしゃぎ!

天文学者をめざし、天文宇宙検定の2級・3級を取得する正太郎くん。天体観測はもちろん、県の施設で開催された宇宙関係の講義に参加するなど宇宙への興味関心は尽きることがありません。

「国立天文台 水沢VLBI観測所」がクラファンを実施するというニュースにもすばやく反応。正太郎くんが貯めたお小遣いを支援金として送る際には『小学生の息子の将来の夢が「宇宙の研究者」です。息子が「お小遣いで寄付したい!」と希望したため、足りない部分を親が補って、寄付させていただきました。 微力ですが、宇宙の研究のために使っていただけると思うととても嬉しいです』とお母さんがメッセージを添えました。

そして、後日、届いたのが本間所長からの「応援ありがとう。正太郎くんも夢を目指して頑張ってください」という手書きメッセージ。正太郎くんは受け取った瞬間のことを「言葉に表せないくらい嬉しかったです!」。

正太郎くんの様子をそばで見ていたお母さんも、「めちゃくちゃはしゃいでいました。以前から、TV番組(コズミックフロント等)や子ども科学電話相談に出演する本間所長のファンだったのですが、ますますファンになったようです。“いつか研究者になって、『あの時の子どもです』と夢を叶えた姿を見せたい”と言っていました。憧れの人に応援していただき、今まで以上に夢に向かって頑張りたいと思ったようです」

SNSで大きな反響を集め、「夢を叶えようとする大きな力になりますね」「研究者になったら、また、次の人へバトン渡せるね」などのリプライがあったことについても、「思ったよりもたくさんの人に見てもらえてびっくりしました。目立ちたがり屋なので嬉しかったです!本間先生だけでなく、たくさんの人に夢を応援してもらっている気持ちになって、これからもっと目標に向かってがんばろうと思いました」と正太郎くん。

「たくさんの人に少しでも宇宙に興味を持ってもらって、研究を応援してくれる人を増やしたいです。国にも支援をお願いしたいです」と研究への応援や支援についても呼びかけます。

お母さんも「多くの方が素敵なエピソードだとおっしゃってくれた一方で、『国立』の機関がクラファンで研究費を集めなければいけない現状を心配する声も多く、夢を目指して頑張ったところで、今の子どもが大人になったときに、研究できる環境がないのではないかというようなリプライが印象に残りました。今回のクラファンは、手当てが遅れている若手研究者の活動経費の支援を中心として活用したいということでしたので、大人として、研究者を目指している子の親として、考えさせられました。研究者を目指している若者や子供たちが、研究者に夢を持てるような国になるといいなと強く思いました」。

若手研究者の活動を支援する資金が必要

正太郎くんと本間所長のエピソードは素敵ではありますが、国の財政事情は明るいものではないという事実も浮彫りに。科学予算は今後も厳しいと予想されており、長期的・安定的な研究費用を確保しなくては、若手研究者の活動を支援する体制も整えられません。

そのような状況では優れた成果も挙げられないということから、国立天文台として初となるクラファンを実施。2022年4月20日から開始したクラファンは、同年6月17日の募集終了時には、目標金額10, 000、000円を大きく上回る寄付金額3023万7000円に。寄付者は1256人でした。

国立天文台教授であり、水沢VLBI観測所所長を務める本間所長は、「国からの研究費が伸び悩む状況が続いているのは事実です。この状況を改善するため、財源の多様化を目指して自分たちにできることをいろいろと挑戦しているところです。その一環としてクラファンを実施したのですが、当初予定を超える資金を集めることができました」と今回の背景について説明。

また、正太郎くんが貴重なお小遣いで私達の研究を応援してくれたことについては「とても驚くとともに感激しました。普段、自分たちの研究が一般の方にどれくらい応援されているのかを知る機会はないのですが、小さい子どもさんも含めた多くの方が応援してくれていると知れたことは、大きな財産になりました。今後の大きな力になっています」と、語ってくれました。

「宇宙の研究者になりたい」と話す正太郎くんの夢が叶う日が今から楽しみです。

■国立天文台水沢キャンパス https://www.miz.nao.ac.jp/
■国立天文台 水沢VLBI観測所 進むブラックホール研究にご支援を(募集は終了済) https://readyfor.jp/projects/naoj-mizusawa

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