既に日本はライバルではない…「大国」として自信をつける中国の対日姿勢を戦略的に見極めよ

治安 太郎 治安 太郎

21世紀に入り、早くも5分の1が終わった。その間、中国は経済力で2010年あたりには日本を抜いて世界第二の経済大国と化し、今日、日本と中国の差は開く一方で、2030年代には米国に追いつき、追い抜かすという予測すらある。この20年間、中国は支援される国から支援する国、もっといえば自国の力に基づいて世界で影響力を高めようとする国へと変貌し、それによって大きな自信をつけている。

以前、米国や日本はいずれ大国となる中国に対して積極的な経済援助を続け、政治制度は変えられないものの、中国が責任ある大国となることを期待してきた。しかし、それは見事に打ち砕かれ、今日米国は中国を最大の競争相手と位置付け、中国との競争、対立という道を選んでいる。このような現実においては、日本は独自に対中戦略を練る必要があり、大国として自信をつける中国の対日姿勢を戦略的に見極める必要がある。では、大国として自信をつける中国の対日姿勢とはどんなものだろうか。

これについてはさまざまな見解が専門家から発言されているが、1つに答えをいうと、中国は圧力と関与という手段を状況に応じ使い分けることで、日米の切り離しを狙ってくることだろう。今日の習政権にとっての最大の競争相手は米国であり、米国と政治的、経済的に足並みを揃える日本の行動を良く思っていない。しかし、アジアでの覇権を巡って日本と真っ向から対立することは得策ではないと考えており、中国としても日本との関係を戦略的に考えている。

たとえば、中国は8月17日、自らが声掛けする形で、中国外交担当トップの楊潔篪(よう・けつち)氏が日本の秋葉国家安全保障局長と7時間に渡って会談した。会談では、高まる台湾を巡る緊張関係、中国による軍事演習など喫緊の懸念事項をはじめ、ロシアによるウクライナ侵攻や核・ミサイル開発を進める北朝鮮情勢などが議論され、日中間で重層的な意思疎通が重要との認識で一致し、建設的かつ安定的な関係を構築していく意思を共有した。一方、8月4日に予定されていた日中外相会談は台湾を巡る緊張により、直前で中国側の要請で一方的に中止され、中国船による日本の尖閣諸島領海への進入は毎日のように続けられている。こういった中国の姿勢は正に圧力と関与の併用といえる。

だが、中国がいつまでもこれを続けるとは限らない。圧力と関与の併用で効果が出ないのであれば、中国なりのデッドラインを迎え、いつの日か日本に対してより強硬な手段に出ることが想定される。何がデッドラインか、これについて明確な答えがあるわけではないが、1つに中国の核心的利益が脅かされた場合が想定される。要は、現在緊張が高まる台湾情勢は正にそれである。長年、中国は台湾は不可分の領土で核心的利益だと強調してきた。

それが脅かされ、中国が日米の切り離しは難しいと判断した場合、中国は日本への態度を一気に硬化させるだろう。いきなり軍事的手段となるかどうかはその状況にならないと分からないが、日本への経済制裁、台湾周辺での海上封鎖、台湾上空での制空権確保など多くの対抗手段が考えられる。日本にとって現在でも中国は最大の貿易相手であり、経済制裁は日本経済に大きな被害をもたらす。また、日本のシーレーンが台湾南部や東部に位置するので、海上封鎖などが実施されれば日本のシーレーンが脅かされる。

上述したが、中国は自信をつけ、既に日本をライバルと位置付けておらず、自分たち有利な環境で関係を進められると思っている。そういう相手に対し、日本は今度どう付き合っていくのか。そのためにもここで言及した中国の対日姿勢を戦略的に見極める必要がある。

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