中古自動車の市場「高騰が向こう2〜3年は続く」説 専門業者にその理由を聞いてみた

松田 義人 松田 義人

 

ウクライナ情勢やコロナ禍の影響で、あらゆる流通に支障をきたしています。この影響から連日、世界的な物価高になっている報道があり、身近なところで物価の高騰を強く実感する人も多いことでしょう。

他方、多くの生活者にとって、動産として最も高額な部類に位置するのが自動車です。かつては「新車は買えないから、中古車で我慢しておこう」という人が大半でしたが、前述のような物価高の影響から、今では「中古車で我慢」というわけにもいかず、中古車市場全体が著しく高騰しているようです。ある見立てでは「中古車の高騰傾向は向こう2〜3年は続く」とも。

この中古車市場の今を、500万件の利用実績を誇る車買取・車査定サイト『ナビクル』が、専門業者に実施したアンケートなどを元にご紹介します。

中古車売買にも大きく影響した、新車生産の「半導体不足による納期遅れ」

『ナビクル』による業者へのアンケートによれば、今年に入って「中古車を高く買い取るようになった」と回答する業者は4割以上。さらに8割以上の業者が「中古車売買において、『半導体不足による新車の納期遅れの影響』を実感する」と回答しています。

 

 

他方、自動車メーカー8社が発表した2022年の上期(1〜6月)の新車の生産台数は、前年同期比の6.0%減とされています。その多くが半導体不足の長期化によって、新車の生産台数を減産せざるを得ない状況であることがうかがえます。結果的に、生活者の元へと届く新車の納期に遅れが生じており、すぐに入手しやすく、新車に比べれば安価な中古車のニーズが高まっているという見方ができます。

車種によっては、中古車価格が新車価格を超えてしまうケースも

こうなってくると、「どのようなタイプの中古車が高騰傾向にあるか」が気になります。この点を『ナビクル』担当者に尋ねたところ、以下のような回答を得られました。

「一概に特定の車種が高騰しているということは言えませんが、リセールバリュー(再販価値)の高い車や新車の受注が停止になっている車は、中古車価格が高騰しやすい傾向にあります。

特にSUVタイプやミニバンタイプの車は、リセールバリューが高くなりやすく、新車でも中古車でも人気のある車種です。例えば、SUVタイプならトヨタのハリアー、ミニバンタイプならトヨタのアルファードなどが挙げられます。

また、半導体不足により新車受注が停止されている車種の中古車価格も高騰しています。その代表として、ランドクルーザーが挙げられます。ランドクルーザーは、半導体不足による影響に加え、海外での人気が予想以上に高まったこともあり、受注停止となりました。中古車価格が新車価格よりも高くなる場合も珍しくありません」(『ナビクル』担当者)

中古車高騰によって「中古車を買うべきか」「新車を買うべきか」がわかりにくい事態に…

こうなってくると、「中古車・新車どちらを買うべきなのか」一般生活者にはわかりにくい事態になってきますが、この点についての業者の回答では「中古車をすすめたい」「新車をすすめたい」がほぼ2分する回答がありました。

 

中古車買取業者を対象にしているアンケートですから、「中古車をすすめたい」が一定数以上多いことは想像できますが、他方で「新車をすすめたい」という回答も4割以上を占めていることから、事態把握を余計に複雑化させます。それぞれの理由についての回答も見てみましょう。

<中古車をおすすめする理由>

・納期が早い/短い
・新車と変わらない商品の提供を心掛けているから

<新車をおすすめする理由>

・数年後のリセールが遅く台数が少ないので高くなる可能性が高いから
・中古車相場での割高感が否定出来ない
・中古車との価格が変わらないから
・使用目的で変わるが、中古車相場が値上がりした事により販売価格に優位性が無いから

中古車の相場が上がったことで、その価格が新車と同等になってくるとなると、中古車を買う必然性がなくなります。このため「だったら、新車のほうが良い」という意見があるのはわかりますが、重ね重ね納車に時間がかかりがちな今です。こういった点から考えると、一概に中古車・新車のどちらが得である、とは言いきれない状況にあるのが今と言えるかもしれません。『ナビクル』担当者にも聞いてみました。

「車の性能・耐久年数は年々上がっており、中古車であっても、ある程度は長く乗り続けることができます。低価格で中古車が手に入る場合は、コストパフォーマンスが良くお買い得の場合もあるでしょう。

一方、新車も総じて手放す際に高く買い取られやすい状態が続いており、車の価値が大きく下がらない短期スパンで乗り換えるなら、特にお買い得と言えます。

いずれにしても、お得に乗ることを考えるなら、新車でも中古車でもリセールバリューの高い車種を選ぶことがおすすめです。そのうえで、売却先をきちんと選び、高い値段で手放すことをおすすめします」(『ナビクル』担当者)

2020年から始まった半導体部品の供給不足による新車減産「過去50年になかった事態」

いずれにしても、半導体部品の供給不足によって新車自動車が減産されるために起きている事態ですが、過去50年を振り返ってみても「過去になかった事態であると認識している」と『ナビクル』担当者は言います。

「このグラフは新車販売台数の推移データです。半導体不足が始まった2020年から新車販売台数は減少し続けています」(『ナビクル』担当者)

このデータを見ると、近いうちにV字回復を見込めるかどうかが気になるところですが、半導体不足について、業者のアンケートでは半数以上が「まだ当分の間は続く」と回答しています。

 

2〜3年は続くと考えられる「半導体不足」車の売りどきはこの間がベスト!?

こうなってくると、具体的にいつまで「半導体不足が続くのか」が気になるところですが、『ナビクル』担当者もこの点については明言することができないと言います。

「具体的にいつまで続くかは言い切れませんが、半導体が安定供給されるまで2〜3年は時間を要し、現在の傾向も同様に2〜3年ほどは続くのではないかと考えております。2022年7〜8月にトヨタやホンダなどの自動車メーカーが一部の生産工場の稼働日を減らしていることからも、数年は過去の状況に戻らないことが伺えます。

また、アンケートにおいて、今後も半導体不足による新車の納期遅れが続いた場合の中古車の買取金額について、7割以上の車買取業者が『中古車を高く買い取るようになる』と回答しています。しばらくは現在と同様の価格高騰が続くと考えられます」(『ナビクル』担当者)

仮に半導体部品の供給が安定し、新車生産・販売も元の状態に戻った際には、当然の原理として中古車価格も落ち着くことが考えられますが、しかし、この向こう「2〜3年」というのが重要で、この時期にカーボンニュートラル実現に向けて、規制以前の車種は著しく価格が下がる可能性もあり、「売りどきは中古車が高値をつけている時期のうちに」とも。

「半導体不足が解消され新車の販売が戻ってきたときには、当然中古車の価格高騰は落ち着いていくと考えています。さらに今後カーボンニュートラルの実現に向けて車の排出ガス規制が強化され、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンが搭載されている中古車の価値が下がっていくでしょう。車を手放すことを考えている方は、早めの売却を検討することがおすすめです」『ナビクル』担当者)

 

『ナビクル』が今後目指すところは?

自動車の購入・売却双方を考えている人は、今後も市場の動向や排出ガス規制のことなども注視しながら判断をしていくほうが良さそうです。今回情報提供をしてくれた『ナビクル』では、ユーザーがより有益なサービスを展開しています。

「従来の『ナビクル』は中古車の購入費用が高くなっている状況だからこそ、お客さまに少しでもお得に車を手放していただきたいと考えています。よりよい売却体験を提供するために、今後もサービスをアップデートしていく予定です。

『ナビクル』は、お客さまが納得して車を売れる・買える世の中を実現するため、今後もさまざまなサービスを通して一人ひとりに合った車売却・車購入のサポートをおこなってまいります。ぜひ多くの方にご利用いただければ幸いです」『ナビクル』担当者)

【調査概要】
〈車買取業者へのアンケート調査〉
調査方法:中古車一括査定サイト「ナビクル」の協力会社である車買取業者を対象にアンケート調査を実施
調査期間:2022年4月13日~2022年4月20日
調査エリア:全国
サンプル数:11社

ナビクル https://www.navikuru.jp/
ナビクル廃車買取 https://haishakaitoru.com/pc/aseodef/default

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