大阪や神戸で近畿日本鉄道が京都に乗り入れていることを伝えると、驚いたような顔を見ることが多いです。近鉄と京都が結び付きにくいのは事実のようですが、実は近鉄の発展を左右する重要なところでもあります。
京都と大和西大寺を結ぶ近鉄京都線
この記事で取り上げる近鉄京都線は京都~大和西大寺間を結び、大和西大寺駅から橿原線(橿原神宮前方面)・奈良線(近鉄奈良方面)へ乗り入れます。また京都市営地下鉄烏丸線と相互直通運転を行い、近鉄電車が京都の中心地を走ります。
近鉄と京都が結び付きにくい最大の理由は近鉄京都線が大阪と京都をダイレクトに結んでいない点が挙げられます。近鉄奈良線・近鉄京都線経由で大阪から京都へアクセスはできますが、阪急や京阪と比べると遠回りになってしまいます。
1992年まで大和西大寺駅でスイッチバックする形で大阪難波~京都間の特急が設定されていました。しかし上下各3本しかなく、ひっそりと廃止されました。
以降、大阪~京都間の直通列車は設定されていませんでしたが、今年4月に大阪難波~近鉄奈良~京都間を結ぶ観光特急「あをによし」がデビューしました。
京阪線に乗り入れていた過去も
近鉄京都線のユニークな歴史にも注目したいところです。実は京都線が近鉄の一員になったのは意外と新しく、1963年のことです。それまでは奈良電気鉄道という一私鉄が運行していました。
もともと奈良電の創業に関して京阪と近鉄奈良線の前身にあたる大阪電気軌道が資本を投入したという経緯があります。奈良電は当初から大軌に乗り入れ、京都と奈良を結びました。
戦後になると丹波橋駅で接続する形で京阪と奈良電との間でも直通運転を開始。奈良~京阪三条、近鉄京都~京阪宇治といった直通列車が設定されました。現に昭和30年代の近鉄時刻表の路線図と見ると細線ですが奈良電気鉄道の路線が描かれ、京阪三条駅の記述も見られます。
しかし奈良電は近鉄と京阪に挟まれ、独自路線を歩むことができなくなり、経営が悪化しました。このような状況下で近鉄は京都進出を目指して奈良電の株の取得をしかけることに。
近鉄と京阪とのバトルになりましたが、関西財界人の仲介により、京阪が保有していた奈良電の株を近鉄に売却することで決着。最終的に奈良電の路線は近鉄京都線になり、1968年には近鉄京都線の1500V昇圧計画に伴い京阪との直通運転が中止になりました。
このような経緯からオールドファンの中には奈良電を懐かしむ声もあり、他の近鉄線とは一味違うことがわかります。
関東圏からの需要を取り込む
ちょっと異質に思われるかもしれない近鉄京都線ですが、今後の近鉄の将来を占う重要な路線になるかもしれません。ポイントは京都駅にあります。京都駅では東海道新幹線と接続し、首都圏からの流入が望めます。観光特急「あをによし」のデビューは首都圏から奈良へ向かう観光客をターゲットとした新規需要の掘り起こしと考えていいでしょう。
ただし東海道新幹線との接続を意識した姿勢は何も最近始めたことではありません。東海道新幹線が開業した1964年には京都~橿原神宮前間に有料特急列車を新設。大和八木駅で大阪~伊勢間の特急に接続することにより、京都から伊勢方面へのスムーズな移動が可能になりました。
今後、近鉄京都線は関西はもちろん全国的にどのようなイメージを持たれる路線になるのでしょうか。