近鉄の新型車両 驚きは「真紅の見た目」だけじゃない! ベビーカー対応スペースには全国初のアイデア

新田 浩之 新田 浩之

近畿日本鉄道は5月17日に新型一般車両の導入を発表しました。一般車両の導入は2000(平成12)年以来24年ぶりとなり、SNSでも話題になっています。

 待望の新型一般車両の登場

近鉄には昭和40年代に製造した車両が約450両もあり、約50年を経過していることから取り換えが急務になっています。そこで2024年秋に新型一般車両(4両×10編成)の導入が決まりました。最初の導入線区は奈良線、京都線、橿原線、天理線ですが、他線区へも展開予定とのことです。

コンセプトは「ご利用いただくあらゆる方々に使いやすく、お客様と地球環境に優しい車両」。このコンセプトを反映したアイデアが目白押しの車両となっています。

車内は混雑度に応じてロングシートまたはクロスシートに変えられるロング・クロス転換シート「L/Cシート」を採用。ロング・クロス転換シートは国鉄時代に開発されましたが、初の本格導入は近鉄です。現在では関東私鉄でも見られる設備になりました。

 座席付きベビーカー・大型荷物対応スペースを設置

また1両あたり2か所にベビーカー・大型荷物対応スペースを設置。このスペースは座席付きとなり、ベビーカーや大型荷物を持っていない人も利用可能。ベビーカー・大型荷物に対応する座席付きスペースの導入は日本初とのことです。

近鉄によるとアンケートの中でベビーカー・大型荷物を持っている際に、他の乗客に気兼ねするという声があり、今回の新型車両に反映させたとのことです。

車内防犯対策にも注目したいところ。車内には防犯カメラを設置し、乗務員や運転指令者が車内の状況を確認できるようにします。関西私鉄は関東私鉄よりも防犯カメラの設置は進んでいませんが、関西でも今後の通勤車両の標準設備になるかもしれません。

環境面では新型のVVVFインバータ制御装置を採用し、従来車両比で消費電力を約45%削減とのこと。新型VVVFインバータ制御装置は以前と比べると加速時・減速時に起きる変調音が静かなため、車内の静寂性も期待できます。

外観デザインは従来車、2000年登場の「シリーズ21」とも大きく異なります。近鉄伝統の赤色をより鮮やかにした上でデザインを一新。内装では花柄の座席表布や木目調の壁を採用します。

今回の新型車両の設計にあたっては株式会社イチバンセンの川西康之氏が参画しています。川西氏はこれまでJR西日本「WEST EXPRESS銀河」やえちごトキめき鉄道「えちごトキめきリゾート雪月花」の設計に関わっています。

 これまでも時代の先端を行っていた近鉄一般車両の数々

ところで特急型車両の陰であまり目立ちませんが、近鉄では一般新型車両の製造にあたり時代の先を行くアイデアを採用することが多いです。

まず1988(昭和63)年デビューの5200系が挙げられます。ポイントは他社に先駆けて片側3扉・クロスシートを採用したこと。全国的に転換クロスシート車両はあったものの、2扉が主流でした。5200系は大阪線や名古屋線の急行を中心に活躍し、JR西日本の車両設計にも影響を与えたと言われています。

「シリーズ21」は「人にやさしい・地球にやさしい」をコンセプトに掲げ、2000年にデビュー。ロングシート座席端には両ひじ掛け付きシート「らくらくシート」を設け、高齢化社会に対応した車両として注目されました。2001(平成13)年には鉄道友の会からローレル賞を受賞しています。

先述した「L/Cシート」も含めて考えると、今回の新型車両も利用者の声に応える形で他社にはない設備を採用する近鉄の伝統を引き継いでいます。それが座席付きのベビーカー・大型荷物対応スペースですが、どのような仕上がりになり、他社にも普及するのかどうか。つい特急型車両に目が奪われがちですが、一般車両の設備面にも注目したいところです。

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