近鉄の新たな観光特急「あをによし」に乗ってみた 包みこまれるようなシートで気分よし

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 京都と奈良、大阪を結ぶ近鉄の新たな観光特急「あをによし」が4月29日、運行開始しました。4両編成の電車には背もたれが高くゆったりとした座席と、菓子やビールが購入できるカウンターがあるといいます。そこで実際に乗車し、乗り心地や座席の座り心地を確かめてみました。

 「あをによし」は京都と近鉄奈良を1日2往復、近鉄奈良経由で京都と大阪難波を1日1往復しています。

 今回乗ったのは平日午前11時20分に京都駅を出発する近鉄奈良行きの便です。予約が取れないかもしれないと思っていましたが、大型連休終了後ということもあってか、座席は当日の朝にインターネットで確保できました。

 「あをによし」には、2人掛けのツインシートと3~4人のグループで利用できるサロンシートがあります。乗ったのはツインシートです。2人掛けですが1人でも座れます。ただし、1人分の乗車券・特急券・特別車両料金のほかに、子ども1人分の特急券と特別車両料金を支払う必要があります。

 さて、出発20分前に京都駅に行くと、すでにホームに止まっていました。車両のデザインは飛鳥時代から高貴な色とされる紫色を基調とし、金色の模様が施された外装です。新車に見える車両ですが、実は1974年製の近鉄特急のスナックカーを約3億3千万円かけて改装したものです。

 特徴はやはり座席。ツインシートの座席は奈良の若草山をイメージした黄緑色です。大阪の家具会社の椅子をベースにして開発されたものだそうです。リクライニングはできませんが、背もたれの高さが約130センチあり、座った人は包み込まれるような感覚を味わえます。一方、サロンシートの座席はスペイン製のデザイン家具のソファだそうです。

 テーブルには正倉院(奈良市)の宝物「瑠璃杯(るりのつき)」をモチーフにしたガラス製の照明器具があり、テーブルの下には携帯電話が充電できるコンセントが備えられています。

 2号車には販売カウンターを備えており、クラフトビールや奈良の「まほろば大仏プリン」、シェラトン都ホテル大阪考案の「あをによしバターサンド」、奈良県産抹茶を使った「大和抹茶ジェラート」などが売られていました。さらに、4号車には沿線に関する書籍を配架したライブラリーもあり、旅の気分を高めることができます。

 印象的だったのは3号車の洗面台。水を受ける鉢は大きな陶製でツバキが描かれており、おしゃれでした。

 ところで、なぜこんな新たな観光特急を近鉄は走らせることにしたのでしょうか。

 近鉄広報部は「奈良は世界遺産に登録された文化財が多く、当社にとって重要な観光地の一つです。また京都駅は関東からの観光客の玄関口となっており、大阪難波駅は近畿各地をはじめ関西空港から入国する外国人観光客の拠点になります。そうした大阪、奈良、京都を相互に結ぶ特急を走らせることにしました」と話します。

 かつて1973年から1992年までにも大阪と京都を結ぶ特急はあったそうですが、大和西大寺経由の最短ルートで結んでいました。今回の「あをによし」は少し寄り道して近鉄奈良を経るルートを走ります。

 静かに走りだし、35分で近鉄奈良へと到着しました。早くて快適ですが、少しもったいない気分です。開放感のある大型の窓からは椅子が高めなこともあって、見慣れた京都府南部の景色も少し変わったように見えました。

 原則として木曜日以外の毎日運行です。乗車券、特急券のほかに特別車両料金(大人一律210円)が必要です。近鉄によると、5月の土曜日、日曜日はほぼ満席だそうです。平日だと乗ることができるかもしれません。

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