大阪大学ゆかりの「緒方洪庵」が日本酒に!?国立大学がお酒造りにはげむワケとは

國松 珠実 國松 珠実

先月、大阪大学が日本酒「緒方洪庵」第2弾の販売を開始した。今年、正式に「阪大オリジナルグッズ」にも認定され、名実ともに大阪大学のお酒となった。

幕末期に医学者、教育者として活躍した緒方洪庵は、大阪に「適塾」を設立。そこで学んだ人たちは大阪の地域医療の優れた担い手となり、現在の大阪大学医学部の礎を築いた。

「大阪大学の精神的源流」とされる、洪庵の名を冠した銘酒「緒方洪庵」だが、なぜ今、大阪大学が作ったのか。先月大阪市内で開催の、試飲会を兼ねたイベントをのぞいてみた。

 災害がきっかけで引き継がれた「緒方洪庵」

実は大阪大学が「緒方洪庵」を作り、販売を開始したのは昨年から。きっかけは、2018年の西日本豪雨だ。当時、水害に見舞われた愛媛県西予市野村町では、死者まで出る惨事となった。かの地で250年以上お酒を作ってきた「緒方酒造」も大きな被害を受け、酒蔵を閉じた。

しかし悪いことばかりではなかった。災害復旧ボランティアで野村町を訪れた大阪大学の教員が、日本酒「緒方洪庵」を販売していた緒方酒造を訪問し、阪大と緒方酒造とのあいだに縁ができたのだ。

「このままでは日本酒『緒方洪庵』がなくなってしまう」と、大阪大学は商標を受け継ぎ、昨年第1弾として日本酒「緒方洪庵」を復活させた。さらに今年になり、「阪大オリジナルグッズ」として、大阪大学のお酒として認められた。

6月26日は午前中に適塾の見学、午後はホテル日航大阪で、洪庵にちなんだ落語とお酒の会が催された。ホテル会場には50名以上が参加。

加熱処理を施した火入れと生酒の2種を飲み比べた客からは「とてもフルーティ」、「私は火入れの方が好き」といった感想が聞かれた。この日用意していた持ち帰り用と販売用の65本はたちまちなくなり、急遽予約販売も受け付けたという。

 大阪大学のお酒、そして野村のお酒として

「ようやく、お披露目が実現しました」と語ってくれたのは、日本酒「緒方洪庵」の実現に尽力した一人、大阪大学人間科学研究科の川端亮教授だ。

「緒方洪庵」は、阪大にゆかりのある「きょうかい6号」酵母を使い、此の友酒造(兵庫県朝来市)で醸造されている。今年の酒米は兵庫錦を使ったが、来年は野村町のある西予市で作られる酒米「しずく媛」を使用した『緒方洪庵』を計画中だそう。 

「実現すれば本当の意味で、大阪大学と愛媛の野村とが結びついたお酒『緒方洪庵』が完成しますから」と意欲をみせる。野村に寄り添う姿勢が印象的だ。

愛媛に住む、緒方酒造の社長だった緒方レンさんも喜んでいる。「大阪大学に商標をお譲りしたあとは、大阪大学の正式な商品になればと思っていました。希望が叶い、本当にうれしい」。

7月9日、10日には大阪国際空港(伊丹空港)で開催の「ITAMI空の市」で、復興支援酒として「緒方洪庵」を販売。7月中は同空港保安検査場内のJALショップ「SORA DELI」で販売される。阪大の利益分はすべて、野村町の復興支援に当てられるそうだ。

いろいろな人の想いを乗せて復活した日本酒「緒方洪庵」。ぜひあなたも味わってみては。

▼特別純米酒「緒方洪庵」は以下で購入可能
阪大生協:https://www.osaka-univ.coop/shop/03.html
(吹田キャンパス本部前店の店頭販売のみ)
NEOのむら:https://nomuraneo.wixsite.com/home-ogatakouan
※そのほか、京阪百貨店でも購入可

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