Jホラーの話題作で記者役 森田想が深夜の森で感じたたただなぬ雰囲気 「怖い場所に監禁された感覚でした」

石井 隼人 石井 隼人

Jホラーの新たなる地平を切り開いた恐るべき一本だ。

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(1月24日公開)は、怖過ぎて謎過ぎる深夜ドラマ『イシナガキクエを探しています』(2024)で視聴者の度肝を抜いた逸材・近藤亮太監督による、ホラーファン待望の長編監督デビュー作。第2回日本ホラー映画大賞を受賞した同名短編を、近藤監督自ら恐怖マシマシでリメイクした。

目の前で忽然と姿を消した弟・日向の消息を探し続ける敬太(杉田雷麟)のもとに、母親から謎めいた1本のビデオテープが送られてくる。霊感を持つ同居人の司(平井亜門)はそこから漂う禍々しさに恐怖を覚えるが、新聞記者の美琴(森田想)を交えた3人で日向がいなくなった“山”へと向かう。

『リング』以降数多くの作品が生まれた和製ホラー史の中で、Jホラーのさらなる可能性と深化を提示する傑作。小手先の脅かしは皆無で、背筋にじっとりと汗がにじむ不気味さが全編を支配する。日本ならではの文化的背景と考察を誘発する怪奇な物語も秀逸で、それを転がしていく俳優陣の低温芝居も寒々しさに拍車をかける。

ホラーは大の苦手だけれど…

傑出しているのが、2024年No.1ホラー『サユリ』にも出演した森田想(24)だ。『サユリ』で見せた度肝を抜く怪演とは一転、痺れるようなリアリズムで恐怖を醸成。森田が表す一つ一つの生っぽい反応によって、常識ではありえない状況や事象に現実味が与えられていく。

その秘訣は彼女独自の演技メソッドにありそうだ。森田曰く「動き出しの初めやセリフを喋る瞬間に、雑味というか一呼吸のクッションを入れるのが好き。誰かに呼ばれて動き出すアクション一つにしても、動きたいと思って動くのと、動きたくないけれど動くのとでは抱いている感情が違う。そこに一呼吸加えることで瞬間的な感情の揺れ動きを秒単位で稼いでいます」

ホラーは大の苦手。だがそんな苦手意識を忘れるくらい、巧妙なストーリーに心を奪われてしまった。

「不穏な空気だけで進まず、しっかりとキャラクターが描かれて、それぞれの関係性が構築されるドラマがある。ビデオテープというアイテムがそこに上手に組み込まれ、段階的に怖くなっていく。ホラーというジャンルは一端忘れて、映画としてメチャクチャ面白い脚本であることに驚きました。そしてもう一度冷静に読むと今度は怖い!そこにもビックリしました」

携帯の電波も繋がらない森で

スタッフ・キャスト顔合わせの際には、近藤監督から「本来のJホラーが帰ってきたかのような、飛び切り怖い映画を作る」という宣言があったという。どんな怖い現場になるだろうか、森田は恐る恐る撮影に入った。

「これといったホラー的演出もなくて。変な言い方になるかもしれませんが、本当に普通の映画作りで、映画の現場としての演出をしていただいた印象。それにも驚きました」

近藤監督から勧められたのは、第70回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した『ラブレス』(2017年)。息子が失踪するという共通点はあるが、ホラー作品ではない。

近藤監督の狙いを必死に探る中で訪れた夜の森での撮影。ただならぬ雰囲気に森田は心底怯えたという。

「とにかく場所が怖すぎて、ただただずっと不気味な撮影でした。撮影時期も真冬の12月なので寒しい暗いし怖いしで、携帯の電波も繋がらない。時間を気にする余裕もなくて、ひたすら怖い場所に監禁された感覚。撮影環境にかなり影響を受けたお芝居になっているような気がします」

怖すぎてまともに観れず

完成作を観た時、最大の驚きに襲われた。

「こんなに怖い作品になるなんて…。撮影中は全然予想がつきませんでした。心底怖いホラーを待っている人からしたら拍手喝采の作品。ホラーが苦手な人に『観て!』とおススメできないくらい怖くて、私も途中から怖すぎて手で顔を覆って、指の隙間から観ていたくらいです。でも面白い。そこがまた凄い」

「ホラーは苦手」とは言うものの、『貞子vs伽椰子』(2016年)、『サユリ』、そして本作と案外良質ホラーに愛されている逸材。この点を尋ねると「きっと私の顔がうるさいからだと思う」と笑いながら自己分析する。

「ホラーはリアクションが肝のようなところもあるので、だからこそオファーをいただけるのかなと。ホラーは苦手ですが、自分のリアクションが認められほめられていると思うと…そこはうれしいです」

ホラーが苦手な理由を重ねて問うと「だって怖いじゃないですか!」と即答だ。

森田さん、そんなことをおっしゃらず日本を代表するホラークイーンになってください!

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