嵐・相葉雅紀の名字は「神様のおもてなし」と関係が? 五穀豊穣を祈る「日本古来の農耕儀礼」を行う場所が由来

森岡 浩 森岡 浩

現在活動を休止している嵐のメンバー相葉雅紀。NHK「2020年東京オリンピック・パラリンピック」のスペシャルナビゲーターをつとめた他、テレビ朝日「相葉マナブ」のMCなどもつとめている。嵐の他のメンバーは「大野」「桜井」「二宮」「松本」とごく普通の名字だが、「相葉」だけは少し珍しい。

この「相葉」には面白い由来がある。そもそもの由来は「あえのこと」に因むとみられる。「あえのこと」とは、古くから伝わる農耕儀礼の1つで、1年の収穫を感謝し、翌年の五穀豊穣を祈って田の神を家に案内し饗応する行事である。

田の神は見えないため、饗応役は神様がまるでそこに存在しているかのように振る舞わなければならない。現在でも能登では行われており、「奥能登のあえのこと」として重要無形民俗文化財に指定され、ユネスコの世界無形遺産にも登録さている。

こうした「あえのこと」を行う場所が「あえば」で、漢字では「饗庭」「饗場」と書かれた。地名も近江や三河など各地にあり、そこに住んだ「饗庭」氏も各地にある。

各地の饗庭氏のうち、最も著名なのが美濃国大野郡饗庭荘をルーツとする饗庭氏である。清和源氏で、土岐光行の子光俊が饗庭氏を称したのが祖。承久の乱後には饗庭荘の地頭となり、戦国時代に斎藤道三に敗れるまで同地で続いた。

この饗庭地名、現在では岐阜県揖斐郡大野町相羽となっている。つまり、読みが「あいぱ」と変化しているのだ。従って、時代とともに「饗庭(あえば)」→「饗庭(あいば)」→「相羽(あいば)」と変化したとみられる。

ところで、中世岐阜県と千葉県は意外とつながりがあった。室町時代の美濃の大名東(とう)氏は、千葉県を代表する氏族である千葉氏の一族。また戦国時代外房にいた土岐氏は、岐阜県を代表する名族である守護大名土岐氏の一族である。つまり、室町時代には、岐阜県と千葉県の間に人の行き来があった。

室町時代頃、土岐氏の分家が千葉に転じた際、その一族である饗庭(あいぱ)氏も土岐氏に従って千葉に移り住み、その後「あいば」という読み方に従って、漢字を「相葉」と変えたとみられる。

現在は関東南部に多い名字で、千葉県に最も多い。千葉県では県全域に分布しているが、とくに市原市や、山武市の旧成東町に集中している。その他では、新潟県上越市や宮崎県都城市にも多い。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース