犬の歯みがき、いつから? シニア犬からでも始めたい口腔ケア 犬の歯周病は万病のもと! 

岡部 充代 岡部 充代

 政府が「国民皆歯科検診」の導入を検討していると報じられました。歯の健康を維持することで他の病気の誘発を抑え、医療費を抑制する狙いがあるそうです。逆にいえば、口腔内が不健康だとさまざまな病気を誘発する可能性があるということ。歯周病の原因である歯周病菌が血液にのって全身を巡ると、心臓疾患や脳疾患、糖尿病やがんのリスクまで高まると言われています。

 それは犬も同じ。ペットとして飼育されている3歳以上の犬の約8割が歯周病予備軍と言われており、うがいなどで口をゆすぐことのできない犬は、より歯みがきが重要となってきます。去る6月4日は「虫歯予防デー」でしたが、それに合わせて『一般社団法人 日本ペット歯みがき普及協会』が無料オンラインセミナーを開催しました。テーマは「今からでも間に合う シニア犬のための簡単歯みがき」。

犬の世界の「1530運動」 

 実は、犬の口内環境は虫歯になりにくく、歯周病になりやすいという特徴があります。同協会代表理事で、犬の歯磨き用品を多数発売している『トーラス株式会社』の代表取締役社長・赤津徳彦氏によれば、「歯垢から歯石になるまで人間が約20日~25日掛かるのに対して、犬はわずか48時間」。あっという間です。そして、同協会理事の一人、石野孝獣医師(かまくらげんき動物病院院長)からはこんな怖い話も…。

「パピーの時期は口腔内免疫が高く、特にケアしていなくても比較的きれいな状態が保たれます。でも3歳以上になると唾液の分泌量が減り、それに伴って口腔免疫が低下。飼い主が気づかないうちに歯周病がどんどん進行して歯を失ったり、歯を支えているアゴの骨が溶けてしまったり、歯周病菌が全身に回って他の大病を招く実例も多く見られます」

  石野獣医師が提唱するのは『1530(イチゴウサンマル)運動』。人間の『8020(ハチマルニイマル)運動』(80歳になっても20本以上自分の歯を保とう)を参考に、犬の場合、15歳になっても30本以上自分の歯を保とうというものです。獣医療の進歩、生活環境の変化など、さまざまな要因により犬の平均寿命は飛躍的に延びています。シニアになっても自分の歯でごはんをモリモリ食べられることは、「健康寿命」につながる大切な要素。だからこそ、飼い主が意識を高めて犬の口腔ケアをしてあげないといけないのです。

 

やらなきゃいけない!はNG

「うちの子はもうシニア。これまで何もしてこなかった。手遅れ?」と不安になる飼い主さんもいるかもしれませんが、「今からでも始めることが大切」と赤津氏や石野獣医師は言います。セミナーでは石野獣医師から、歯周病予防に重要な唾液の分泌を促す「唾液腺マッサージ」が紹介され、さらにもう一人の理事、須崎大ドッグトレーナー(DOGSHIP LLC.代表)からは、シニア犬になって始める口腔ケアにおいて、飼い主が注意したいさまざまなポイントが解説されました。その一部を紹介しましょう。

①健康状態とご機嫌を確認する

②犬とふれあう「幸せな時間」の延長として、犬がリラックスできる体勢で行う

③「やらなきゃいけない!」とムキになるのはNG

④犬が大好きなご褒美を途中で与えながら協力してもらう

⑤「もうイヤ」のサインを見逃さない

 どれもうなずけるものばかりですよね? そして、ぜひ参考にしたいのが「オーラルシートから始める」ということ。まずは指から、というのは何となく想像できますが、指を受け入れてくれたからと言ってすぐに歯ブラシを突っ込まれたら、多くの犬は不快に感じるでしょうし、歯肉炎になっていた場合、ブラシが当たって痛いはずです。指にシートを軽く巻き、「磨くのではなくマッサージをする意識で」(須崎トレーナー)やさしくケアしてあげるのがコツ。

「無理は禁物です。いきなり100点を目指すのではなく、少しずつ受け入れてもらいましょう。今日は左側だけ、という日があってもいいじゃないですか。シニア犬の時間の流れを尊重して、長くやりすぎないことも大切です」(須崎トレーナー)

 もうシニアだから…ではなく、シニアだからこそ始めたい犬の口腔ケア。愛犬ができるだけ長く、できるだけ多く自分の歯を保てるように、飼い主としてできることはたくさんあります。

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