介護付き老犬ホームとは?ずっと家族でいるために、老犬の介護を一緒に伴走してくれる施設…経営者に聞いた

岡部 充代 岡部 充代

 一般社団法人ペットフード協会が2020年12月に発表した資料によれば、ペットとして飼育されている犬の平均寿命は14.48歳。数十年前に比べると飛躍的に延びています。老犬、シニア犬と呼ばれる犬の増加はつまり、「介護」を必要とする犬が増えているということ。もはや介護は人間社会だけの問題ではないのです。

 そこで注目したいのが「老犬ホーム」の存在。ホームに預けることを「飼育放棄」ととらえる人もいるようですが、それは誤解です。

「犬を捨ててしまったらもう会えません。私は犬の保護主をしていたことがありますが、無責任に飼育放棄した飼い主には二度と会わせませんでした。でも老犬ホームは違います。期間を区切った利用も可能ですし、入所しても面会に来られる。一時帰宅する子もいますし、ここは『ずっと飼い主でいるための場所』なんです」

 そう説明してくれたのは大阪・茨木市で介護付き老犬ホーム・老犬ホテル・ケージフリードッグホテル『Familio』(ファミリオ)を経営する森下ゆかりさん。人間の介護職員として働いていた経験を生かし、2016年10月にオープンしました。

「保健所に持ち込まれた13歳くらいのシーズーを引き取ったことがあります。目が見えず心臓も悪い子でした。『そこまで飼っておいて捨てるなんて』と言う人もいましたけど、よくよくの事情があったんじゃないかと…。捨てる以外の選択肢があれば、何かが変わるかもしれないと思ったんです」(森下さん)

 

“プロ”を頼るのは悪いことじゃない

 ペットホテルの中には年齢制限をしたり、投薬が必要な子はお断りといった条件を設けているところもあるようですが、Familioは老犬ホームとしてもドッグホテルとしても“介護・介助付き”。食事や水分補給、歩行、排泄などの介助はもちろん、トリミングや添い寝もしてもらえます。

「認知症で夜鳴きする子だとご近所迷惑になるからと車中泊をされていたり、真面目な方ほど自分を追い詰めてしまいがちです。預けることに罪悪感を覚えて、うちに来るまでに何か月も掛かったという人もいました。でも、それはむしろ逆。犬は自分のために飼い主さんが苦しんでいると感じますし、どちらにとってもいいことはないんです。いきなり入所する必要はありませんから、『少し離ればなれになるけど、またあなたを元気にお世話するために少し休むわね』と言って送り出してもらえればと思います」(森下さん)

 もちろん費用は掛かりますが、仕事をしている場合、いくら家にカメラを設置していても気になるでしょうし、ペットシッターは時間が限られます。その点、Familioは経験を積んだプロが24時間常駐していますから、不測の事態にも適切に対応してもらえます。実際に利用するかどうかは別として、「頼れる場所」を確保しておくだけで、張りつめた気持ちが少し解放されるかもしれません。

 介護・介助が必要な犬だけでなく、健康な若犬の利用も可能ですから、何らかの事情で預け先が必要になった場合やシニアになったときに備えて、無料お試し体験をしておくのがオススメ。飼い主と離れても大丈夫か、ケージフリーの環境で他の犬と問題なく過ごせるかなど、あらかじめチェックしておくと安心です。

 

犬と飼い主の“伴走者”に

 もう一つ、「介護について気になることがあれば、相談しに来てほしい」と森下さんは話します。

「歩けなくなった。食べられなくなった。シニアになるといろいろな事が起きます。でも、歩けなくなった原因が、オシメがかわいそうだと家の中にブルーシートと新聞紙を敷き詰めた結果、犬が滑るからだったり、食べられないんじゃなくて、方法が分からなくて食べさせてあげられないだけだったり。ご相談いただければ、その子にとってより良い方法をご提案できるかもしれません。ひとりで抱えきれなくなった悩みを話しに来てもらうだけでも構いません。将来的には、同じような境遇の方に集まってもらい、情報交換の場として使っていただくことも考えています。私からアドバイスできることもあるでしょうし、逆に介護経験者から教えてもらうこともあるでしょう。情報共有することが適切な介護への近道になると思っています」(森下さん)

 人間の介護をしている人によく言われるのは、「ひとりで抱え込まないで頼って」ということ。それは犬の介護においても同じです。Familioが目指しているのは、犬と飼い主さんの“伴走者”になることです。

 ◆Familioウェブサイト https://familio.dog/

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