「歯磨き粉は少なめに」→その情報、古いです! 正しい歯ブラシの選び方から磨き方まで歯科医芸人が解説

山本 智行 山本 智行

 今年も「歯と口の健康週間」(6月4~10日)がスタートしました。というわけで吉本興業所属で唯一の歯科医芸人”パンヂー陳”こと、陳明裕さんが登場。歯科医師として歯にまつわる”いい話”を語ってくれました。正しい歯ブラシの選び方、適正な歯ブラシ圧とは。ドリフターズへのオマージュがきつすぎますが、しばし、お付き合いください。(聞き手・山本 智行)

陳明裕(以下陳):毎年この時期になると、マスコミなどでお口の健康についての特集が多くなりますが、6月4日は何の日かご存知ですよね?

−−当然、知ってますよ、語呂合わせで“蒸しパンの日”でしょ!

陳:そうそう、この時期に食べる、蒸しパンは最高ですからねって、なんでやねん!歯医者の僕がわざわざこの時期に、札幌市のパン屋さんが制定した“蒸しパンの日”については語らんでしょ!

−−お約束でボケただけですやん。“虫歯予防デー”でしょ。

陳:はい、ブー!高木、ブー!その呼び方は残念ながら1928年から1938年まで日本歯科医師会が実施していた記念日の呼び方で、いまは6月4日から10日までの期間を「歯と口の健康週間」と呼んでます。

−−高木、ブーはないでしょう。

陳:山本さんもお口の“仲本工事”、もとい、お口の“中もっと掃除”してもらいたいので、きょうは歯磨きについてお話します。

−−会話の中に、ドリフのメンバー名、チョコチョコ入れるん止めてもらえます?

陳:山本さん、歯がちょっと加藤茶色くなってますけど、1日何回歯磨きしてはりますか?

−−朝晩の2回ですけど…。やっぱ、毎食後に磨いた方が良いんですよね。でも、昼食べた後は磨く場所もないし、しゃーないでしょ。たまに、トイレの手洗いを歯磨きで占拠してる人がいますけど、手が洗えなくって困ったこともありますし、自分がするにはちょっと気が引けちゃいます。コロナ禍だと飛沫による感染リスクもありそうだし。

陳:確かにトイレの手“あらいちゅう”は、歯磨きで占拠されると、周りの人からしたら「ナンダバカヤロウ」って感じで歓迎されないかもですが、コロナ対策として日本歯科医師会は「職場や学校など人が集まる場所で歯みがきをする際は唾液飛沫が飛び散らないように口を閉じて歯みがきしましょう」と呼び掛けていますので、そういったマナーも大切だと思います。歯ブラシはどんなのを選んでますか?

−−もしや。荒井注さんの「ナンダバカヤロウ」のギャグが分かる人、もうほとんどいませんから普通に話してください。私は歯の隙間の汚れもしっかり取りたいので、隙間に入りやすい細い毛の歯ブラシを選んでますよ。

陳:ブー!それ、高木ブーです。日本歯科医師会のホームページによると「毛先が細い極細毛の歯ブラシは隙間に入り込みやすい反面、毛が細く柔らかいので、汚れを掻き出す力が弱い。逆に、毛先が太い歯ブラシは、歯間などの奥まで到達しにくいかわりに汚れを掻き出す力が強く、清掃効率が高いという特徴がある」とのことです。

−−清掃効率?急に敗者、いや、歯医者らしくなりました。

陳:なので、もしラウンド毛などの普通の太さの毛先の歯ブラシと同じ清掃性を求めるのであれば、極細毛の場合、ブラッシング時間をもっと長くしなければいけません。長時間をかけて磨かなければ、磨き残しが増えてしまいます。では、歯ブラシ圧は何グラムぐらいかけて磨いてますか?

−−なんですと。わたし、血圧やったら最近高めなんで気にしてますけど、歯ブラシ圧は気にしたことないです。

陳:歯ブラシの方法によって適正歯ブラシ圧は異なるので一概には言えませんが、小刻みに横に動かす、一般的なスクラビング法の場合150~200グラム位を推奨している先生が多いようです。あまり強い圧だと、かえってプラーク除去率が落ちるという研究もありますし、歯磨きで歯が削れてしまう主たる原因は歯磨き時の歯面にかかる圧だともいわれています。

−−150~200グラム、っていわれても歯ブラシ圧計でもない限り、家じゃ計れないでしょ!?

陳:台所にあるキッチンはかりの上に、歯ブラシをいつもの歯磨きをする感じで載せてから目盛りを見れば、簡単に普段の自分の歯ブラシ圧が分かりますよ。多くの人は、えっ、こんなに力かけてたんだ!って感じると思います。

−−血圧も歯ブラシ圧も高めは注意ってことですね。

陳:山本さんのことやから歯磨き粉も、ケチケチして蚊の涙ほどしか付けてはらへんのとちゃいますか?

−−確かにチョコッとしか付けてませんけど、これは昔、あんまりたくさん付けたら歯磨き粉の中の研磨剤で歯が削れてしまうって、陳さんと違ってチャンとした歯医者さんに言われたからです。

その情報、古いです!

陳:その情報、古いです!確かに昔は歯磨き粉の量が多いと研磨剤だけでなく、中に含まれている発泡剤で口の中が泡立ちすぎて磨きにくくなるとか、成分中のメントールなどの清涼成分で、すぐに磨いた気分になってしまって歯磨きの時間が短くなってしまう等の理由で「歯磨き粉は少なめに」と推奨されていた時期もありました。しかし、最近は、歯磨きで歯が削れる一番の原因は先ほども言いましたが歯磨きの力が強過ぎるからで、次が歯ブラシの毛の硬さなどの物理的な影響だといわれていて、歯磨き粉の歯に対する磨耗性は国際規格(ISO)で定められているので、通常のブラッシング圧による歯磨きを行っている限りは、歯磨き粉による歯の磨耗に対する安全性は担保されています。

少なくとも日本国内で売られている歯磨き粉を使っているならば心配する必要はないと思います。特にフッ素配合の歯磨き粉を使っている場合には、フッ素によるむし歯予防効果が十分に発揮されるためには、山本さんみたいにケチケチしないで、ある程度の使用量が必要です。

−−いちいち言い方が感じ悪いですね。どのくらい使ったらいいんですか?

陳:フッ素入りの歯磨き粉なら適量は1回1グラム程度といわれていますので、歯ブラシの大きさにもよりますが毛先の2/3以上は付けた方が良いと思います。ブラッシングの時間も長いに越したことはありませんが、少なくとも1回3分以上はかけてほしいです。

−−3分間あったら歯を磨いてる間にボンカレー作れますね。

陳:例えが古いし、せっかく3分かけて歯を磨いてるのに、ボンカレー食べたら、また歯磨きせなあかんやないですか!

−−それやったら「ウルトラマンにはお勧めできませんね」にしときますわ。

陳:ウルトラマンが口を開けてるのは見たことないから歯を磨くとは思えませんけどね。こういった歯のお役立ち情報は日本歯科医師会のホームページに詳しく書かれていますので、もっと知りたい方は「歯と口の健康週間」でもありますし、是非、ご覧ください。

−−なんだ、そりゃ。

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