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「何となく体調が悪い」と伝えても休ませてもらえない 統合失調症の30代女性「見えない障害」を職場に理解してもらうには?【社会福祉士が解説】

もくもくライターズ もくもくライターズ

「20歳のころ、統合失調症を発症しました。服薬・通院治療によって、30歳の今は、基本的に症状は安定しています。

数年前に障害者雇用で時短勤務の事務職に就職しましたが、天候の変動や仕事の内容によって、感情が揺さぶられたり、体調的につらくなったりすることがしばしば起きるようになりました。

そんなときは少し休みたいというのが本音ですが、なかなか言い出せません。それは、障害者雇用ではあるのですが、内定時に持病を伝え、通院時にお休みが欲しいという旨を伝えたきりで、その後具体的な相談などをしてこなかったからです。障害の症状がわかりにくいので仕方ないのですが、どうやって職場で私の体調を理解してもらったらよいのか悩んでいます」

そう語るのは、30代女性の西片なつき(仮名)さんです。西片さんは、過度なストレスや無理が体調の悪化につながることがあるため、常に体調に気を配っています。しかしながら、職場に「何となく体調が悪い」と伝えても、一時的な休憩や離席をすることがなかなか叶わず、休ませてもらえないのが現状でした。障害者雇用促進法において、事業主は合理的配慮の提供義務がありますが、内定後の継続的な対話がなされていないという問題もありました。

西片さんのように、見えない障害のある人が、職場から理解を得られにくいケースは多々あります。見えない障害だからこそ、「伝え方」には注意が必要です。まずは、なぜ見えない障害が誤解されやすいのか、その原因を探っていきましょう。

「見えない障害」が誤解されやすい理由

「見えない障害」が職場で誤解されやすい背景には、いくつかの理由があります。

まずは「外見が健康そうに見える」ことです。車椅子などの目に見えるサインがなく、見た目上は障害があると分かりづらいため、周囲はそもそも相手が困っている事実に、なかなか気づくことができません。

また「症状が日によって変動する」ことも、原因のひとつです。「昨日はできたのに今日はできない」という体調の波が、一貫性のなさとして映り、周囲の困惑を招くケースはよくあります。

さらに、精神障害の特性として、自分の体調の変化を具体的に言語化することが難しいという側面もあります。

その結果、障害の特性によるミスや体調不良が、知識のない周囲には「本人のやる気の問題」として捉えられてしまいます。医学的な原因があるにもかかわらず、最終的に本人の「甘え」や「怠け」のせいにすり替えられてしまうのが、大きな問題のひとつです。

それでは、西片さんのような、統合失調症などの目に見えない障害を持つ人々は、職場での誤解をどのように解いていけばよいのでしょうか。次に、職場で理解を得るための伝え方のコツを見ていきましょう。

職場で理解を得るための伝え方のコツ

周囲に状況を正しく理解してもらい、スムーズな協力を得るためには、伝え方に3つのコツがあります。

①困りごとを具体的に説明する

西片さんのように「精神障害があり、何となく体調が悪い」といった伝え方では、相手はどう対応すべきか困惑してしまいます。

今までの伝え方が曖昧だったことに気づいた西片さんは「私の場合は、雨の日や低気圧のときは、朝、体を動かしにくくなることがある」「マルチタスクが重なると頭が混乱しやすい」など、実際の業務や出退勤にどう影響するのかを具体的に言語化して伝えることにしました。

②自分で対処していることも具体的に伝える

西片さんは、すべてを周囲に委ねるのではなく、自身で行っている対策もセットで共有することにしました。「天候がすぐれない日は、2時間に1回、静かな休憩室で10分休めば落ち着く」「メモをこまめに取り、優先順位を確認する」といった自己対処を伝えました。

③配慮してほしい内容を明確にする

最後に西片さんは、職場に求める配慮をピンポイントで依頼することにしました。「天候が悪い日は、別室で2時間に1回休憩させてほしい」「指示はテキストで残してほしい」「急なタスク変更の際は声をかけてほしい」など、周囲に協力してほしいことを明確に提示しました。

これら3つを西片さんが実践した後、職場では本人の取り組みに対する理解が深まり、周囲もサポートしやすくなったようです。

職場の上司や同僚ともスムーズに意思疎通を図れるようになり、心の負担の少ない環境も築き始めています。

職場の理解を広げる方法

自分からの発信だけでなく、周囲を巻き込みながら職場の「理解の土壌」を育てていくことも、長く安定して働くための重要なポイントです。

西片さんは、職場の理解を広げるために、新たに以下のようなことを実践しています。

①上司への定期的な状況報告

西片さんは、定例面談などの場を活用して、体調や業務の進捗状況を、定期的に上司へ報告するようになりました。今回の件をきっかけに、問題が起きてから相談するのではなく、普段の体調の変化に合わせた配慮が、適切に機能しているか日ごろから共有しておくことで、上司も状況を把握しやすくなり、突発的な変化にも迅速に対応できるようになることに気づいたためでした。

②産業保健スタッフや両立支援コーディネーターとの連携

また西片さんは、上司やチームメンバーに直接伝えにくい悩みや、医学的な見地からの意見は、産業医、産業保健師、産業カウンセラー、産業保健スタッフなどの専門家に間に入ってもらうことにしました。専門職の視点を交えて客観的なアドバイスや橋渡しをしてもらうことで、会社側にも状況を理解してもらい、適切な配慮を検討してもらうためです。

また、産業保健総合支援センターなどに所属している両立支援コーディネーターに相談をし、管理職との橋渡しをお願いすることも一つの手段です。

これら2つを実践したことによって、上司や同僚との仕事がよりスムーズになったといいます。

理解されにくいからこそ、配慮を求めるときは明確に

「最初は自分のことを話すのにも、勇気がいりました。けれども、今回のことをきっかけに、きちんと必要な自己開示をして、相手に理解を求めることは無駄ではなく、むしろお互いのためなのだと気づきました」

西片さんは、改めてそう語りました。

「見えない障害」への理解を職場に広げるためには、自分の状態を客観的に分析し、求める配慮を「明確に」言葉で伝えることが第一歩です。自己対処の姿勢を示しつつ、上司や産業医と定期的に連携を図ることで、周囲も適切なサポートがしやすくなります。お互いが心地よく働ける環境を築いていきましょう。

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

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