日常生活を送るなかで、ふと感じた「なにかおかしい」という小さな違和感は、大きな病気の前触れかもしれません。漫画家・イラストレーターの相澤いくえさんの作品『脳梗塞日記』は、弱齢で脳梗塞を発症した作者の実体験が描かれています。同作はX(旧Twitter)に投稿されると、約1.1万いいねの注目を集めました。
それはある日、作者が同棲しているパートナーと飲食店で食事をしていたときのことです。左手で触ったテーブルがまるで冷蔵庫から出したてのように冷たく感じました。そのうえ、おしぼりや座布団なども全部冷たく感じます。しかし右手で触るとどれも冷たく感じないことにも気づきます。
さらに、その後に帰宅するために立ち上がろうとしたところ、左足に力が入りませんでした。これはおかしいと思った作者は、救急車を呼ぶべきか相談するダイヤル『#7119』にかけますが、ろれつが回っていることから内科受診を勧められます。
作者は#7119に案内された病院4件に連絡するものの、「救急車が来てるから難しい」「まだ若いのに大げさでは?」といった返答をされました。さすがに考えすぎだったかもしれないと思った作者は諦めようとしますが、パートナーから他の病院にも電話をかけてみようと提案されます。その結果、5件目の病院が診てくれることになりました。
23時ごろに到着した病院では、さまざまな検査をしたあとMRIを撮ることになります。その結果、なんと脳梗塞があることが判明したのです。医師より「今日からこのまま入院です」と告げられた作者。荷物を取りに帰ることも許されず、それらすべてをパートナーに持ってきてもらうことに。
入院中は1週間、血をサラサラにする点滴と、頭の細胞を保護する点滴をおこないます。左手がしびれているため、右手に点滴ルートを確保しますが、少し動いただけで輸液ポンプのアラームが鳴り響きあまり眠れませんでした。
翌日、作者は朝食を摂りますが、車いす移動しか許されていないため歯磨きはガーグルベースン(うがい受け)でおこなうように指示を受けます。洗面台に立てないことを知った作者は「大変なことになってしまった」とより深く実感することになりました。
さまざまな検査の結果、作者にはPFO(卵円孔開存)と呼ばれる、右心房と左心房の間の壁に小さな穴が空いていたことが判明しました。成人の4人に1人はこのPFOを持っているそうですが、時々足の血栓などがこの穴を通って脳の血管に詰まることがあるそうです。作者の場合も、これが原因ではないかと医師から説明を受け、経食道心エコー検査をおこなうことになります。
経食道心エコーとは胃カメラより少し太い管を飲み込み、心臓を裏から見るというものです。医師によると、「検査中はオエオエなって苦しそうなんですけど、終わると忘れるようになってるんですよ。だから大丈夫です」とまるで大丈夫ではないかのような説明を受けました。
作者が調べてみたところ、鎮静剤を用いるため検査中の記憶が無くなるそうです。仮に検査が楽に終わったとしても、苦しかった瞬間は確かに存在するということに動揺します。これは100万円手に入るけど5億年1人ぼっちを強いられるという『5億年ボタン』と一緒ではないか、時間とは一体何なのだと深く考えさせられることとなるのでした。
読者からは「救急の先生がちゃんと検査してくれる人でよかった…」「自分も他人事ではないかも」など、さまざまな声が寄せられています。そこで、作者の相澤いくえさんに話を聞きました。
おかしいな〜と思ったらとにかく病院に行ってほしい
―脳梗塞のご経験を描いたきっかけについて教えてください
これまで大きな病気をすることがなく大人になったので、まさか自分がという思いがあったのと、脳梗塞なんて怖そうな病気に自分がなると思っていなかったので、どこかで同じように感じている人に同じような症状が出た時に病院に行けるように…と思って描きました。
―作中では、実際に起きたさまざまな体験を描かれていますが、とくに印象的だった出来事はありますか?
最初に出た症状がかなり軽いものだったので(左側の痺れと触ったものが冷たく感じる)、まさか脳梗塞とは予想していなくて驚きました。あと経食道心エコーという怖い検査をしたのですが、本当に怖かったのでそれが伝わると嬉しいです。医療の発展はすごいです…!
―このご経験を踏まえて、読者の方々へメッセージをお願いします
おかしいな〜と思ったらとにかく病院に行ってほしいなと思います。あともしかしたらうまく伝わらなくて断られちゃったりすることもあるかもしれないのですが、病院によって対応や判断が違うこともあるので、諦めないでほしいなと思います。
<相澤いくえさん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/aizawa_ikue
『脳梗塞日記』
▽BOOTH(ダウンロード版)
https://kappa-no-omise.booth.pm
▽メロンブックス(冊子版)
https://www.melonbooks.co.jp/circle/index.php?circle_id=117685
▽『カイの砂漠』トーチwebで連載中
https://to-ti.in/product/kay-no-sabaku