人命に大きな影響を及ぼす可能性のある脳梗塞ですが、実は、自覚症状がないままに起こっていることも。無症状のまま起こる“隠れ脳梗塞”について、その発見・治療方法とともに、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――先生、隠れ脳梗塞という病気があるのですか?
主に脳ドックを受けた際に見つかる症状で、無症状のまま脳梗塞を発症していることを指し、正式には無症候性脳梗塞といわれます。隠れ脳梗塞の存在そのものが危険であるわけではないのですが、今後、脳梗塞を発症する可能性が非常に高い兆候とされています。
自身の気づかない間に起こっている隠れ脳梗塞というのは、身体に大きな影響の出る機能を司っていないような、小さな血管が詰まったことによって引き起こされます。代表的なものですと、1mm以下の細い血管が詰まることで起こるラクナ梗塞と呼ばれる症状があり、これは高血圧の方に多くみられます。なかでも、早朝だけ血圧が高い“隠れ高血圧”の方の発症が多いといわれています。
――なるほど。予防するためには、高血圧のコントロールが大切なのですね。
ほかにも、喫煙をする方、糖尿病の方には気をつけていただきたいですね。また、高齢者の方が検査を受けられた場合にも、多くの方に隠れ脳梗塞の症状がみられます。
――隠れ脳梗塞は、自然治癒することはないのでしょうか?
隠れ脳梗塞は、既に脳梗塞を発症した後の状態を指しますので、この画像上の変化自体が消えることはありません。1〜2個の隠れ脳梗塞であれば、あまり気にしなくても大丈夫なのですが、多数存在する場合は脳全体の機能を下げてしまうため、認知症につながる可能性もあります。
――どういった方法で発見されるのですか?
脳ドックでのCTやMRIなどの検査によって、脳を撮影した際に発見されます。健康診断などの血液検査の数値などでは見つけることができないため、発見のためには積極的に脳ドックを受けていただく必要があります。
――隠れ脳梗塞が見つかった場合、どのような治療方法があるのでしょうか?
発症原因となった病気を探し出すことが第一となります。早朝高血圧である場合や、境界型糖尿病である場合など、まずは自身の気づいていない病気を見つける必要があります。たとえば、早朝高血圧を見つけるためには、起床時と午後に血圧を測定し、どちらの数値が高いかを確認していただきます。その上で、原因となった病気の治療を続けることになります。
◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科