尻尾の長い黒猫
大福ちゃん(5歳・オス)は、生後1日か2日の時、兄弟と一緒に保護団体のボランティアに保護された。6匹兄弟だったが、4匹は亡くなったという。大福ちゃんともう1匹のオスは順調に成長して里親を探していた。
大阪府に住む智さんは、自分で保護した猫を2匹飼っていた。熊本県の大震災の後、熊本県の保護団体からひまわりちゃん、銀ちゃんを迎え、後におとめちゃんも引き取った。おとめちゃんを迎える時、「これで里親になるのは最後かな」と思ったが、もう1匹、かねてから夫が欲しがっていた尻尾の長い黒猫も一緒に引き取ることにした。その猫が大福ちゃんだった。
夫は犬派だったが、2匹目の猫、豆虎ちゃんを溺愛するようになり、完全に猫派になったという。猫の動画を見たり、猫について調べるようになり、いつしか「尻尾の長い黒猫が欲しい」と言うようになったそうだ。
先住猫の遊び相手になってくれる子が欲しい
智さんがおとめちゃんと一緒に大福ちゃんを迎えた理由は、もう一つあった。先に迎えた銀ちゃんの遊び相手になってくれる子が欲しかったのだという。
「銀と同じくらいの月齢だったので、遊び相手になるのではないかという期待もありました。先住猫のよつばは若い猫には無関心で、豆虎は意地悪はするけど遊ぶ気はゼロ。ひまわりは、この頃は遊ぶ余裕がありませんでした。銀は遊びたい盛りなのに、私が相手ではなかなか満足させてやれない。大福やおとめといっぱい走り回って遊べたらいいなと思っていました」
銀ちゃん、大福ちゃん、おとめちゃんはとても仲良くなったそうだ。
原因不明の咳
大福ちゃんは小さい頃から咳をした。家の中でもコンコン、病院に行ってもコンコン、何かの拍子に咳が出ると止まらず、辛そうだった。
「原因が分からず薬を飲んだこともありますが、良くなりませんでした。そのうち、夫が大福を抱っこすると咳が出ることに気がついたんです。当時、夫はタバコを吸っていて、家の中では吸いませんでしたが、服ににおいがついていたんです。夫は、大福のためならばとすぐに禁煙しました」
智さんは匂いのするもの、特に化学物質の匂いがするものは徹底的に使わないようにして、洗剤などを変えた。家の中に持ち込むものも気をつけて、大福ちゃんが咳き込みそうなものは玄関より奥には入れなかった。すると、大福ちゃんの咳は治った。
子守が上手
智さんは、これで猫は最後と決めていたが、その後も猫の里親になった。子猫を迎えると、大福ちゃんは上手に子守をしてくれた。
「男の子が子猫の面倒を見てくれるとは思っていなくて、びっくりしました。よく世話をしてくれるので頼りになります。大人猫にはなかなか厳しい一面もありますが、騒がしかったり、わちゃわちゃしていると、一喝して秩序を正そうとするところがあるように思います」
ただ、頭数が増えるにつれて、大福ちゃんは布製品の上に粗相をしたり、スプレーのようなオシッコをしたりするようになった。銀ちゃんも布の上にする。智さんはトイレ掃除をかなり頻繁にするようになり、週に一度は猫トイレを丸洗いしている。
「猫砂の管理もこまめにしています。大福は、トイレの環境を見直す機会を作ってくれました」