頭に針のような物を刺される虐待を受けてきた子猫 今では先住猫と猫団子になる幸せ猫さんへ

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

鍵尻尾は幸せを引っかけるものだというのに、毎日電気のコードばかりを引っかけている猫さんがいます。京都府のたまくん(7歳)です。なまじ尻尾が長いものですから、あっちこっちのコードを引っかけてはプラグを抜いたり家電を倒したり。

それでも全然気にしません。いつもドンと構えている子なんです。だって、あの頃の出来事に比べたらへっちゃらだから。あの頃の出来事というのは、今から7年前にさかのぼります。

実はたまくん、虐待を受けていたのです。生後約1カ月の小さな小さなたまくんをぶったり針のような物で刺したり…。遂には、粗相をするからといって小さな段ボール箱の中に入れられてしまいます。虐待の理由は、とても身勝手なものでした。それは、「目の色がブルーじゃないから」。

恐らく虐待が始まったのは、キトゥンブルーが薄れた生後約1カ月半ぐらいのころからでしょう。本来の目の色、ブロンズ色になった頃から飼い主の情緒が不安定に。たまくんを譲渡した保護団体にクレームを入れたり、返すと言い出したり。

保護団体は飼い主がこんな状態では不安です。たまくんに会わせてほしいと頼むものの、なかなか会うことができません。最終的には警察に間へ入ってもらい、たまくんを取り返すことができました。

再び里親を探すことになったたまくんですが、保護団体は悩みます。初めて猫を飼う人に譲るのは怖い。猫と暮らしたことがあり、猫に慣れている人に託したい。そこで白羽の矢が立ったのが、Nさんです。この時、2匹の猫と暮らしており、他の猫の譲渡を希望していました。

連絡を受けたNさんは、動物病院のケージ越しにたまくんとお見合いをします。痛ましい過去を聞き、迎える決意をしました。ただ、真菌にかかっていることが分かったので、1カ月待つことになります。

いよいよ本当の家に迎えられることになったたまくん、嬉しくってたまりません。真菌が完全に治っていなかったのでしばらくケージ暮らしでしたが、Nさんと遊ぶのが楽しくて楽しくて!ようやく自分と向き合ってくれるたった一人の人に出会えたのです。

でも、Nさんは初めてまじまじと見たたまくんに、正直ギョッとしたのだそう。頭は刺された傷あとだらけで、そこが瘤のように盛り上がっています。それにガリガリに痩せこけ、子猫らしい愛らしさが全くないのです。

Nさんは頭の傷を何とかしたいという一心で、ネットで見た情報「犬のハゲにはイソジン」をたまくんにも試してみます。瘤が少しハゲてきていたからです。だから、この頃の写真を見ると、たまくんは白猫なのにいつも赤茶色。見た目は少し悪くても、続けているうちに少しずつ瘤が小さくなってきました。

しかし、幼少時に十分な栄養を与えられなかった後遺症は残ります。手足だけがひょろ長く、なんだか宇宙人のような見た目なのです。Nさんの家を訪れる人は口々に「気持ち悪い」と言いますが、Nさんにとっては可愛い「我が子」です。

余談ですが、粗相をするといって段ボール箱に閉じ込められていたたまくんは、Nさんの家に来てから一度も粗相をしたことがありません。やはり環境が悪かったと思われます。

7歳になった今も元気いっぱいのたまくん。家中を駆けずり回り、カーテン登りだってしちゃいます。でも、抱っこは苦手。だらんと力が抜けてしまうのも、虐待の後遺症でしょう。このようなことを見つける度にNさんはうちの子にして良かったと思うのだそう。

先住猫のとらくん、ふくくんとの関係も良好。とらくんは良いお兄ちゃんっぷりを発揮してくれますし、ふくくんは良い距離を保ってくれます。冬場は3匹一緒に猫団子になっているんですよ。とても幸せそうな寝顔なのだそう。

やっぱり鍵尻尾は幸せを引っかけるものなのかもしれません。だって、色々あっても、たまくんは今幸せですから。電気のコードはおまけかもしれませんね。

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