「財政破綻寸前の京都市に別荘税導入」という見出しから1年、新税の条例案が3月25日、京都市議会で可決された。しかし、1年間検討を重ねた結果、別荘税ではなく空き家税(非居住住宅利活用促進税)という着地に至った。
京都市では、インバウンド急増に伴うお宿バブルに加え、別荘購入者が急増し、街中の新築マンションは10年で1.6倍という地価が急騰、都市部の住宅とオフィスが慢性的に不足し人口流出を招いた。そこで、別荘税の導入が検討されたのだが、別荘に限定すると課税対象が狭まることに加え、徴収コストが高くなりコスト倒れなどの課題から結果的に人が居住していない空き家に課税し、流通を促進させる税に方向転換し課税する運びとなった。
対象は住民票の有無を問わず居住実態がないないものは全て対象となる。詳しい計算式は割愛するが、街中のマンション最上階(100平方メートル)で93万円、嵐山の別荘(300平方メートル)で23万円、伏見区のマンション(60平方メートル)で2万4000円などという事例が紹介されており、ざっくり言うと現在支払っている固定資産税の約半額近い額が課税されることになる。つまり、今払っている不動産への課税が1.5倍程度になると思ってもらえると分かりやすい。
実は、固定資産税についても要注意だ。固定資産税には住宅特例というものが存在し、皆さんのご自宅もそうだが家屋については通常の固定資産税が1/6に減免されている。ただ、別荘についてはそもそも固定資産税の特例措置が適用されない。ただ別荘かどうかについては自己申告なので実際には別荘であっても特例が適用されているケースが多い。しかし、今回の新税導入に伴う調査で用途を尋ねられた際に別荘と答えると固定資産税の特例が外され、固定資産税も跳ね上がることになる。(ちなみにセカンドハウスだと特例が適用される。)
こうして別荘に対しては特別厳しく、空き家にもどんどん課税する方針だが、一方で多くの例外もある。賃貸物件や売却予定物件が除外なのはともかく、市内に5万戸といわれる京町家(昭和25年以前に建てられた古家はほぼすべて指定)も除外、当面は家屋の固定資産税評価額100万円未満も免除とし、本来建て替えを促進したり流通を促進させたい街中の古民家が軒並み除外となっている。本当にこれで課税目的である「空き家の利活用促進」が進むのかはかなり怪しい。加えて、毎年の収入9億円前後に対し徴収コストが2~3億円と試算されており、かなり費用対効果の悪い税金になってしまっていることも課題だ。
「財政難でやるのではない。住宅の流通促進の為だ。」と強調する京都市だが、本当に住宅流通の決め手になるのだろうか。令和8年の課税開始まで解決しなければいけない課題は多そうだ。