「今日給食こぼして箸落とした女の子のために、ティッシュ渡して代わりに箸を取りに行った男の子に『食べてる途中だったのに助けてあげようと思ったんだね、そういうところ本当に素敵だね』って褒めたら、『いつも先生がやってることじゃないですか』って言われた時の私の気持ちを50字程度で示せ」とツイートしたのは、中学校の先生になって1年目の月さん(@sci_jhs2)。リプ欄には、「なんて素敵な子でしょう。惚れてしまうじゃない。ありがとう」というほっこりしたリプライが続々と寄せられました。
「先生方の日々の苦労を相殺してしまうくらいのパワーワードですね。素敵な先生に恵まれて、この子たちは幸せです」
「いい男に育つので『あの時の行動は先生のおかげです』って言われて下さい」
「『子どもは、言うようにはならないが、するようにはなる』ほんとにそう。感動をありがう!」
「すてきです!先生のやること、子どもはちゃんと見てるんですね!!」
このエピソードからも生徒たちに慕われていることが分かりますが、日頃どのように生徒とどう関わっているのか月さんに聞いてみました。
ーー投稿に出てきた生徒は何年生ですか。
「中学校2年生の生徒です」
ーー日頃から人に優しく接していらっしゃるのでしょうか。
「『優しく』というより、子どもたちに『信じてもらえる』ような行動をすることを心掛けています」
ーーこういうことがあると、クラス全体がムードになりますね。
「私の真似をしてくれる生徒が増えました。例えば、私は職員室で仕事中に子どもや他の先生に話しかけられたら、必ずパソコンを閉じて話を聞くようにしています。それを見た子どもたちは教師や友達に話しかけられた時、自分が何か作業をしていてもしっかりと手を止めて話を聞く、一人一台の端末を触りたい気持ちをぐっとこらえて、始まりと最後の挨拶の時には必ずパソコンを閉じて挨拶をするようになりました。ルールとして決まっていることではないのですが、『先生ならこうする』と数名が全体に呼びかけていたようです」
ーー別の投稿に「子供の背から学ぶことも多い」とありますが、どんな時にそう思われますか?
「特に家族との関わり方で学ぶことが多いです。母の日や父の日を大切にしていたり、自分の家族のことを楽しそうに話してくれたりする子がとても多いです。自分が子どもだった時には両親を思う気持ちを余るほど持っていたのですが、大人になるにつれて少しずつ薄くなっていったと感じていました。子どもたちの行動は、私の両親との関わり方を見直すきっかけになりました」
ーーコロナ禍やいじめ問題など、子どもたちを取り巻く環境は困難が多いように思います。子どもたちに接する時に気をつけていることはありますか。
「余裕のある大人でいることが大事だと思います。私は子どもたちに『話したい』と思ってもらえる人になりたいと常々思っています。子どもたちは休み時間になると、『先生〜、先生〜』と寄ってきて、今日あった嬉しいことや嫌だったこと、クラスで悩んでいること、今不安なことなどを話してくれます。『話したいな』と思っている子が教師の忙しそうな姿を見て、話しかけない方がいいと気を遣うように、子どもたちとの会話のチャンスは教師のその時の雰囲気や態度によって簡単に増えたり減ったりします。子どもたちが私と話したい時に話しやすいように、すぐに聞ける余裕がなくてもあるふりをします。どんな話題だとしても受容の態勢を整えておくよう気をつけています」
◇ ◇
月さんと生徒たちの間には、信頼関係がしっかり築かれているんですね。コロナ禍、私たち大人も生きていくのが大変な時代ですが、月さんが言うように、「余裕のある大人でいることが大事」なのかもしれません。まずは人の話に耳を傾けてみませんか。