ページを繰る左手の感触が次第に薄くなって…ああもう、めくりたくない!紙媒体だからこそ…面白い本の「肌感」に6万人が共感

山本 明 山本 明

 読書の秋です。本好きに向けて広く呼びかけるツイートが大注目を集めました。

 「私の母が言ってた、『面白い話を読んでるとき、めくる左手に伝わる感触が次第に薄くなってきて、“こんな面白い話がもう終わるのか!めくりたくない!”という本の醍醐味をじわじわと肌で感じれるから紙媒体が好き』が分かる人いませんか(集まれ)」

「電子書籍も購入や管理や便利で重宝してるんだけど」と前置きしたうえで、9月12日に投稿されたこの呼びかけに応じて、約6万ものいいねがつきました。

 ツイートしたのは、こんでんえいねんしざいほう(@hiroju5555)さん。投稿には「わ゛がる゛!!!!薄さを感じてしまって、一回読むの止めたりすることもあった」「ほんこれよ 面白い小説であればあるほど、素敵な世界との繋がりが自分の手の中でだんだんと薄れていく感じがたまらんのや」などと、紙の本好きさん達からの感極まる賛意はもちろん、「Kindleだと(残り頁数の)%出るからかなり同じ感覚ある」と電子書籍派の間にも共感の輪が広がりました。

自らの呼びかけに多くの人から反響があったことへの感想を、こんでんえいねんしざいほうさんに聞きました。

――なぜこのツイートをしようと思われましたか。またお母様がこの発言をなさった時のご状況も教えてください。

 10年ほど前、『面白い本とは?』という話を母とした時、「宮本武蔵や赤毛のアン、ハリーポッターとかは、めくるのが『惜しい』んだよね。読み終わりたくないんだよ。それが面白いって事なんだよね」と母が話したのがきっかけでした。(今回のツイートは)ちょうど、文庫を読んでいるとき、母の言葉を思い出して、「これって、うちの家族だけの感覚なのかな?」と思い、皆さんに聞いてみようとツイートしました。

――今までに、本当に読み終わりたくない、と思った本はありましたか。

 私と母の中でのベストは、吉川英治の宮本武蔵です。戦前に書かれた小説ですが、古臭くないし、説教臭くもない。笑いあり涙ありで8巻ほどあるのですが、一気に読んで、巌流島あたりでは「登場人物たちと別れたくない」と、めくるのが惜しかった…本当に惜しくて大切に1枚1枚めくりました。この本は3年に1回のペースで寝かしては読み返しています。最初は宮本武蔵になりきり読んでいたのが、最近は又八やおばばという、武蔵とはある意味で対をなす人物の目線で読んだりと、読み返すごとに新たな発見があります。

――読了が近づくにつれ、感じるのは高揚感と寂寥感、どちらですか?

 幸福感が強いですね…「楽しい作品をありがとう」と感謝しながら最後はめくっています。

――呼びかけに大きな反響がありました。

 本が好きという人がこんなにも多いのは驚きと同時に嬉しさが込み上げてきました。 私が印象に残ったのは「本は時間じゃない」というコメントです。最近は「本を読んでこういうことを得られた」とか言う方が結構いますが、生産性とか、効率とかじゃないんですよね、読書って。理由とか関係なしに、楽しいから時間を忘れて読むんですよ(笑)。

   ◇   ◇

 さらに「本屋さんに行って、店内を自由に散策するのも、本屋さんごとに違うブックカバーの香りを嗅ぐのも、ピンと張った新品の本の1ページ目をめくる緊張とワクワク感も、全部含めて『本』だと私は思います。ですので、電子書籍も大変便利で私も活用していますが、週に一回は本屋さんでブラブラする時間を設けるようにしています。皆さんもたまには読書はいかがですか‼︎^_^」とも、こんでんえいねんしざいほうさんは答えてくれました。今秋はぜひ、皆さんも、「これは私の本だ…!!」と確信できるような一冊にめぐり合えると良いですね。

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