なぜ?まだ若いのに…働き盛りの夫が「若年性認知症」と診断された家族の苦悩

長岡 杏果 長岡 杏果

超高齢社会を迎えた日本において大きな課題の一つとなっているのが「認知症」です。一般的に認知症は高齢者の方が発症すると思われている方も多いのではないでしょうか。実は認知症は40代でも発症することもあり、64歳以下で発症する場合を「若年性認知症」といいます。若年性認知症は働き盛りの世代の方が発症するため、本人だけではなく家族にも大きな影響を与えてしまいます。しかし日本ではまだ若年性認知症に対する支援や認識が不十分であり、さまざまな問題を本人や家族が抱えてしまっている現状があるのです。

今回取材を受けてくれたのは九州在住のYさん(40代・会社員)です。Yさんの夫であるMさん(50代)は48歳のときに若年性認知症を発症しました。若年性認知症を発症してから今日に至るまでの苦悩を話してくれました。

まず家族の名前の呼び間違えが多くなり…

最初にMさんの変調に気づいたのはYさんでした。2人の子どもの名前を呼び間違えたり、ときには子どもに対してMさんの名前を呼ぶこともありました。その他にも財布や家の鍵をどこに置いたかわからない、トイレの流し忘れ、水の出しっ放しなどが見られるようになりました。

また当時Mさんは会社員として働いていましたが、職場でもこれまでなかったようなミスをすることが増えてきており、上司から様子がおかしいとYさんに連絡が入るようになったのです。

Mさんの変調は疲れが原因だと思ったYさんは、近所の内科を受診するようにMさんに伝えました。Mさんが病院から帰ってくると一通の紹介状を持っており、総合病院への受診を勧められていたのです。その数日後、総合病院を受診した結果「若年性認知症」と診断されました。Mさんの変調に気づいてから受診まで、約1年半の月日が経過していました。

特に仕事の配慮もしてもらえず…

職場には若年性認知症であることを伝えましたが、特に仕事の配慮をしてもらうことはできませんでした。また日によって体調にも波があったため、「できるのにしない」などと理解してもらえないことも多い環境の中、Mさん自身も度重なるミスで徐々に自信を失い、退職することになりました。Yさんは仕事を続けながらMさんの介護を行う日々を送るようになったのです。

Yさんの収入とMさんの障害年金で生活を送っていましたが、収入は激減し子どもの大学進学の費用を準備することも経済的に難しい状況でした。これまで大学進学に向けて勉強を頑張っていた子どもの夢を諦めさせたくないと思う一方で、経済的な問題は大きな負担となりました。またこれまでと様子が違うMさんに、子どもたちは戸惑いを隠せず徐々にMさんと子どもたちの距離は離れていきました。

家族で話し合い、支援を上手に活用することが大切

Yさんは最初、Mさんが若年性認知症を発症したことを隠そうとしていたそうです。もちろん子どもたちにも伝えず、自分が頑張ればどうにかなると思っていたと話してくれました。しかし次第にYさんは自分一人でMさんを支えようと頑張れば頑張るほど、Mさんと子どもたちとの距離が離れていくことに気づきました。

そこでYさんは病院のソーシャルワーカーや地域包括支援センターに相談するようになり、さまざまな支援を受けることで家族がまた団結することができたと話してくれました。さまざまサポートや奨学金を利用することで子どもは大学へ進学することができた、とうれしそうに話していたMさんの笑顔が印象的でした。

   ◇   ◇

今回の取材を通して若年性認知症は、周りから理解されにくい病気であるということを強く感じました。また働き盛りに発症するため、さまざまな影響を大切な家族に与えてしまう病気でもあります。Yさんから、若年性認知症は早期発見・早期治療、周りのサポートや上手に支援を活用することが大切だということを教えてもらいました。

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