愛知県在住のAさん(30代)は両親が離婚しています。大学生になったころ、それまで一切聞いたことがなかった離婚当時の話を母親から聞くようになり、大変驚いたそうです。
両親が離婚したのはAさんが12歳のときで、母親と弟、妹との4人暮らしが始まりました。Aさんはお父さんっ子だったこともあり、離婚当初は寂しい気持ちでいっぱいだったそうです。父親とはいつでも会える環境ではありましたが、突然父が家を出て行ったことをしばらく受け止められずにいたそうです。
離婚した理由について、母親は話してくれることはありませんでした。話してほしいと頼んでも「あなたたちはまだ子どもだし、片方からの言い分聞くだけじゃ、どちらか一方が悪く見えてしまうかもしれない」「私もお父さんも、あなたたちにとってはずっと親だから、いつか何を聞いても偏見を持たずに受け入れられるようになってから話そうと思う」と言っていたそうです。
父はADHDだった
あるときを境に母親は離婚した理由を話すようになりました。理由は一つだけではなく、日々のことが積み重なり離婚に至ったことがわかりました。そして、その中で一番驚いたのは父親がADHDだったかもしれない、という話でした。
最近ではニュースなどでも大人のADHDがピックアップされ、理解が深まりつつありますが、20年ほど前はそうではありませんでした。父親は幼少期から、周囲が疑問に思う行動があったそうで、公園の滑り台に何度も用を足したり、約束の時間を守れなかったりと、周りが頭を悩ませる行動ばかりしていそうです。
それは母親に対しても全く変わりませんでした。気持ちを思いやることができなかったり、イライラが募り爆発的に激怒することがありました。これが毎日にように続くことに耐えきれず、離婚に至ったのだと、母親はAさんに語ってくれたのだそうです。
ただ、母親も父親がADHDだと知ったのは離婚後のことだったそうで、「それを知っていたなら結果は違ったかもしれない」と言っていたそうです。
大人のADHDとは?
大人のADHD(注意欠陥多動性障害)は成人の3~4%の割合でいるといわれており、うつ病と同程度の割合です。大人のADHDは子どものころに気づかれることなく成長し、ストレスなどが原因で顕著化するといわれています。
ADHDは脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンとドーパミンの機能障害が原因といわれており、生まれながらの疾患です。多動性、衝動性、不注意と分類されています。大人になると多動性や衝動性はコントロールできるようにもなり、それほど目立たなくなるといわれています。しかし、不注意は問題になってくるケースが多いです。
ADHDは生まれながらの疾患なので、子どものころから持っているものです。しかし、気づかなかったり、周りのフォローのおかげでそれに気づくことなく大人になる人が増えています。自身がADHDと知らず、周囲から否定的に扱われることによりうつ病を発症する人もいます。それがきっかけでADHDに気づく人もいます。
周囲に相談する勇気
大人になってからは自分と周囲との違いに気づき、戸惑う人もいるでしょう。その戸惑いを相談することができるかといったら、必ずしもそうではありません。しかし、勇気をだしてそれを周囲に相談することで、自分の生活が少しはラクになるかもしれません。周囲がどう反応するのかなど気になることはあるかもしれませんが、自身や周囲の人たちのためにも相談やクリニックの受診を考えてみるのもいいでしょう。